愛憎渦巻く世界にて
悩むビクトリーをあざ笑うかの如く、ブリタニアの装甲馬車は走り続けていた。繋がれた馬は、よほど強靭な体を持つようだ。装甲付きの荷車を一頭立てで、猛スピードで走るほどなのだから。単純に、運転するブリタニアが怖いからかもしれないが……。
「行け行け〜!!!」
ブリタニアは無邪気に馬を煽る。
装甲馬車は、首都から外側へ出る門に差し掛かっていた。もう戦闘が止んだため、門は開け放たれていた。しかも整備中で、今は閉めることができない。そんな幸運もしくは悪運に恵まれ、ブリタニアは難無く、門を通り抜けられた。一応配置されている門番の兵士は、目を丸くしながら、馬車を見送った。運転席は見づらいため、まだ子供のブリタニアは運転しているとは思うまい。
ムチュー王国首都を飛び出したブリタニアは、本国で見た世界地図の記憶を頼りに、西へ馬車を走らせる。記憶頼りとはいえ、陸続きだし、道を尋ねれば(強引に)、迷子にはならずにすむだろう。
ブリタニアは、ゴーリ王国首都へ行くのだ。しかし、現地に着いたとして、どう行動するつもりなのかまでは、彼女はまだ考えていなかった。なにせ、手綱を乱暴に握りながら、彼女はその事について、考えを巡らせる始末なのだ……。