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愛憎渦巻く世界にて

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「国王陛下!!! 国王陛下!!!」
ウィリアムは、目の前で酔い潰れている国王に呼びかけている。
「ゲルマニアさん!!! ゲルマニアさん!!!」
そのすぐ横では、マリアンヌが、同じように酔い潰れているゲルマニアに呼びかけていた。
 この二人は、他のビヤ樽もほとんど空っぽにしてしまうまで、ビールをひたすら飲み続けたのだった……。そして、あるとき同時に、こうして床に酔い潰れてしまったというわけだ。嘔吐まではしていないので、急性アルコール中毒にはなっていないことだろう。
 しかし、頼み事をするはずの国王がこの有り様では、ゲルマニアにがんばってもらった意味は無い。ウィリアムは、乱暴に国王を起こそうとしたが、さすがに側近たちに制止されてしまった。彼らにの手によって、このまま部屋まで運ばれるのだろう。

「……朝まで待つしかないのか!」
シャルルは居ても立っても居られない様子だった。1秒でも早く、この悲惨な戦争を終わらせたいという気持ちで、彼の心は一杯だった。それなのに、頼みの綱である国王の酔いが醒めるのを待つ羽目に陥ったわけだ……。
「おい、おまえたち」
側近たちに運ばれようとしていた国王が、口を開いた。普段の強さはないものの、しっかりとした口調だ。シャルルたちは一斉に、彼のほうを見る。少しフラついているものの、自分の足で立っている国王。
「私に何か頼み事があるのだろう? だから私に酒を勧めた、違うかい?」
どうやら、国王にはお見通しらしかった。
「これはこれは!!! 私の仲間が、とんだ御無礼を致しました!!!」
ウィリアムが頭を下げてみせる。発案者はお前だろと、シャルルたちは思ったのは言うまでもない……。
「実は、この戦争を正式に終わらせるために、王室の捺印がなされた書簡を御用意してもらいたいのです」
「ほう。まさか、お前たちがその使いをやるというわけか?」
「……そのまさかでございます。我々数人が、ゴーリ王国首都の王城へ出向き、国王に直談判するつもりです」
ウィリアムは、はっきりとそう伝えた。とにかく頼むしかないのだ。

「やはりそうくると思っていたよ。条件を1つ飲んでくれれば、認めることにしよう」
国王はそう言った。「条件」という言葉に、シャルルたちは息を飲む。
「その条件とは何でしょうか? ゲルマニアの処女ですか? どうせ酔っ払って寝ているので、ご自由にどうぞ」
「マリアンヌは連れて行かないでほしいのだ」
ウィリアムの下ネタをスルーする形で、国王は言った……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん