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愛憎渦巻く世界にて

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 しばらくすると、宴が始まった。寄せ集めの楽団による華やかな音楽が、ダイニングルームに響き渡る。幅広いテーブルに並べられた料理の数々は、備蓄品を巧みに調理した物だけでなく、ゴーリ軍から鹵獲した物も多数あった。放棄されたゴーリ軍陣地から、ちゃっかり頂戴したというわけだ。もちろん、責められるような話ではないが。
 すっかりご機嫌のブリタニアは、デザートのコーナーで、お菓子の数々を次々に平らげていた。ビクトリーの注意は、なかなか彼女に届かない……。
 そして、出席者たちには、シャルルたちや国王だけでなく、過酷な包囲戦を勝利に導くために努力した官吏や軍人たちも勢揃いしていた。彼らは、グラスやジョッキを片手に、互いの健闘を讃え合っている。それに釣られるような形で、シャルルたちも互いの健闘を讃え合った。今までの苦労を、嫌でも思い出していることだろう。
「ゲルマニア。酒豪のおまえが、国王に酒をガンガン勧めろ。タイミングよく、私が例の件を話すから」
「卑怯な気がするが、そうするしかないな」
ただそれでも、自分たちがまだ健闘をしなければならないということは、忘れてはいなかった。
 ゲルマニアは、ビヤ樽を威勢よく脇に挟むと、国王の元へ向かう……。国王はダイニングルームで1番目立つ場所で、側近たちとともに飲み食いしていた。


「国王陛下! こちらのビールは、我が国自慢の銘柄の物でしたぞ!」
国王の前まで来たゲルマニアは、ビヤ樽をドカンと置く。
「おお、そうであるか! では、さっそく頂こうか!」
彼がそう言うのを見越していた様子で、ゲルマニアはビヤ樽からジョッキへ、泡立つビールをなみなみと注いだ。そして、今にも泡が溢れそうなビールを、国王にぐいっと差し出した。
 国王はジョッキを受け取ると、一気にそれを飲み干してみせた。
「ふむ! ゴーリの酒もなかなかだな!」
どうやら、国王は相当の酒豪のようだ。少し顔が赤いだけでピンピンとしている。
「ではもう1杯どうぞ」
「いや、次はゲルマニア殿に飲んでもらおう! 噂によると、酒にかなり強いらしいじゃないか!」
国王はそう言って、ビールがなみなみと注がれたジョッキを、ゲルマニアに戻した。周りの側近たちからの視線もあり、とても断れそうになかった……。
 とはいえ、彼女は噂通りの酒豪だ。別に嫌な話ではない。そのため、彼女も一気に飲み干してみせたのだった。
「相変わらずの美味! この時代を感じさせる苦さがたまりませぬ!」
ゲルマニアは威勢よくそう言った。
 彼女の態度が気に入ったらしく、国王は側近に、2杯のビール入りジョッキを用意させた。飲み比べ勝負というわけだ……。
 シャルルたちは呆れつつ、勝負の行方を見守ることにした。この分だと、国王は機嫌良く泥酔してくれることだろう……。例の件を持ちだすタイミングを見計らうウィリアム。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん