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愛憎渦巻く世界にて

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「サボっていたわけじゃないようだから許してやれよ。それに、そんな手紙をもらっても、読まなかったことにしていた」
ウィリアムはそう言って、ビクトリーと伝令を労った。
「危険な目に遭うのには慣れてしまっているぐらいですものね。全然褒められたことじゃありませんが」
そう言ったメアリーの表情は、呆れが浮かびつつも怒りは感じられなかった。今さら何をという思いなのだろう。
 この二人がなだめてくれたおかげで、ビクトリーと伝令はひとまず気持ちを落ち着かせることができた。

「せっかくだから、1つ仕事を頼めるかな?」
ウィリアムは思いついたように言い出した。
「はい、なんなりと殿下」
「祖国の父上と母上宛てに、近況の手紙を書こうと思っているのだ。大丈夫だと思うが、ブリタニアのことを心配されているかもしれんしな」
彼がそう言うと、メアリーが服の内ポケットから、便箋や筆記具を取り出した。そして、彼に手渡す。
「かしこまりました、殿下!」
皇子であるウィリアムから直接仕事を任されたので、伝令は元気を取り戻せたらしい。
「少し時間がかかるから、先に行ってくれるか?」
近くに放置されていたテーブルへ向かいながら、ウィリアムがそう言った。
「……ああ、では後でな」
ウィリアムとメアリーと伝令を残し、シャルルたちは先に、宴が開かれる予定のダイニングルームへ向かう。


 王城のダイニングルームでは、宴の準備が大急ぎで進められていた。激しい戦の直後なので、後片付けから始めなければならない。それでも、国王主催な上に勝利を祝う宴なので、家来たちは必死に働いていた。この分だと、正午にギリギリ間に合うはずだ。
「おお、よくぞ来てくれた! この宴の立役者たちじゃないか!」
準備を見守っていたらしく、国王がシャルルたちのほうへ近づいてきた。
「立派な宴になりそうですね、お父様」
「ここしばらくは質素な食べ物ばかりだったからな。今回ばかりは、おまえも大いに食べ、酒を飲んでいいぞ!」
まだ戦争が終わったわけでもない、国王はもう勝利に酔いしれてしまっていた。とはいえ、国王が上機嫌でいてくれたほうが、交渉についての頼み事をするシャルルたちには、都合が良かった。
 いいチャンスだと踏んだゲルマニアは、国王にその頼み事を持ちかけようとしたが、
「もう宴は始まっているのか?」
後ろから来たウィリアムに声をかけられてしまった。何か用事を思い出したのか、国王はどこかへ行ってしまう。せっかくのチャンスを逃してしまったというわけだ……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん