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愛憎渦巻く世界にて

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「失礼します、ゲルマニア殿!」

 ちょうどそのとき、王城からの使いがやってきた。勝利の知らせを聞き、国王が寄こしたのだろう。
「国王陛下が、この度の勝利を祝う宴を、お昼にダイニングルームにて開きたいとのことですので、ぜひ御出席くださいませ!」
使いの男はそう言った後、
「これは個人的な言葉ですが、この戦を勝利に導いていただき、ありがとうございました」
恭しく付け加えた。心からの感謝の念が伝わってくる。
「なに、私は人々を守りたかっただけだ」
ゲルマニアは、少し恥ずかしそうだった。
「その宴の機会を利用して、ムチュー国王にお伺いを立てるのがいいだろうな。それも、酒が頭に回った頃合いでだ」
悪知恵を働かせたウィリアムが言った……。


 使いが走り去った後、シャルルたちはゆっくりとした足取りで、王城へ向かう。馬に乗り、急いで向かえば、宴までの時間を持て余してしまうだろう。とはいえ、短くも激しい戦闘の後では、これがベストの行動だといえる。ゆっくり歩いて、体を休ませればいいのだ。馬も、兵士たちに任せる形で休ませている。
「お兄様!!! もしかしてお城へ!?」
ところが、彼らのささやかな休息ムードを、追いかけてきたブリタニアがぶち壊した……。ウィリアムがやれやれとため息をつく。
「確かにお城に行くところだが、お酒の席に呼ばれているからだ! まだ子供のブリタニアには早いから、ついてきたらダメだぞ!」
ウィリアムは、慣れた口調でブリタニアを追い払おうとする。おそらく何度も、ブリタニアを自分から離れさせようとしてきたのだろう……。
「あらお兄様、私はもう10歳ですのよ! このあいだの誕生日のとき、お父様やお母様がお許しになったわ!」
ところが、今回は失敗してしまったらしい。彼女やウィリアムの両親に確認を取ろうにも、急には無理な話だ……。
「……仕方ないな。タカミ帝国の恥とならないよう、しっかり見張らせてもらうからな!」
「また子供扱いする!!! 私もさっきの戦いに参加しましたのよ!!!」
ブリタニアの甲高い声に、ウィリアムもへろへろな様子だった。彼女の特性を熟知しているらしいメアリーは、なんと他人のフリをしている……。
「ブリタニア様〜〜〜」
ビクトリーもやってきた。声の調子から、疲労困憊に陥りつつあるのがわかった。戦闘が終わった今も、彼女に苦労しているのだろう……。
「おお、ちょうどよかった! ブリタニアも城へ行くことになったから、護衛兼監視の務めを果たしてくれ!」
しかし、ウィリアムは無慈悲にも、ビクトリーにそう命じたのだった……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん