愛憎渦巻く世界にて
ゲルマニアは、飛んでくる矢を避けつつ、一進一退の攻防が続く戦線を見て回った。この状況を打開する突破口を見つけるためだ。彼女は今までの経験から、どの戦線にも必ず弱点が存在すると確信していた。
{あそこの連中、まだ未熟者だな……。矢の狙いが外れすぎている}
今回もいつも通りに、それを見つけることができた。シャルルたちの元へ急ぐゲルマニア。自分たちが突破口を見つけたことを、敵に知られぬ前に行動せねば。
――ゲルマニアが奇襲の突撃を始めた頃、ブリタニアやビクトリーの一行は、眠りについていた。伝令の帰りが待てず、寝ることにしたのだ。
しかし、戦闘による喧騒や地響きが彼らに襲いかかり、叩き起こされることとなった……。
「なんなのよ!」
不機嫌そうに目をこするブリタニア。
「見張り、何事だ!?」
ビクトリーが薄目を開けながら、見張り役の兵士に問いかける。丘の上に立っているその兵士は、不思議そうに首をかしげていたところだった。
「ムチュー軍とゴーリ軍が、大規模な合戦を始めた模様です!」
「首都の門が破られたということか!?」
「いえ、城壁沿いに移動していたゴーリ軍の背中を突く形で始まりました!」
見張りの報告を聞いたビクトリーは、不意打ちを喰らったような表情を浮かべた。
「……援軍が来たということか。しかし、挟み撃ちにされる危険を考えると、ゴーリの連中がそんな戦力を無視しているはずは……」
独り言を呟くビクトリー。
「首都の周りは包囲されていた。もしうまく回り込むとすれば……」
彼はふと地面を見下ろし、はっと気づいた。
「どこかに地下道でもあるんだな!」
彼の答えは正解だ。
「あたしたちはどうするの!? いっしょに戦わないの!?」
ビクトリーが振り向くと、ブリタニアがそこにいた。彼女の視線は、まっすぐ彼を見ている。
「……いっしょに戦うとは、どういうことですか?」
自分で予想はできていたものの、聞かずにはいられなかった。できれば、そんな予想は外れてほしかったのだ……。
「お兄様はきっと、ムチュー側で戦っているわ! それなら、あたしたちも、いっしょに戦わないといけないんじゃない!?」
悪い予想というのは的中するものだ……。まあ、質問した彼自身もわかっていたことだが。