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愛憎渦巻く世界にて

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「行くぞー!!! 一気に片をつけるのだ!!!」

 馬に乗ったゲルマニアが叫びつつ、先陣を切って突撃する。勇ましい彼女の後を、クルップやムチュー兵たちが叫びながら後に続く。彼らは大軍という規模ではなかったが、巻き上がる砂埃は入道雲のように大きく見えた。
「ゲホゲホ!」
そんな砂埃に苦しみながら、他のシャルルたちも彼らの後に続いて駆ける。
「あっちから敵が来たぞ!」
「援軍が来てしまったのか!?」
敵のゴーリ兵たちは、突撃してくるゲルマニアたちに狼狽える。目が覚めるほどの恐怖心を感じていることが見て取れるほどだ。

 ゲルマニアとクルップは、馬上から剣を振り回し、ゴーリ兵たちを血祭りに上げていく。死にゆく彼らの一部は、2人の兜の隙間からチラリと見える、ゴーリ人特有の金髪を見たことだろう。まさか同じ国の人間に殺されるとはと、さぞ驚愕したに違いない……。
 もちろん、2人のほうも、罪悪感が無かったわけではない。やむをえない状況とはいえ、同じ国の人間を殺していることには違いないのだから……。

 他のシャルルたちは、先行のゲルマニアたちに追いつくと同時に、無我夢中で戦い始めた。
 とはいっても、シャルルたち3人が使う武器は飛び道具なので、離れた場所から狙い撃つ形だ。ナイフも扱えるメアリーはともかく、敵に近づかれると不利である。そのため、身の安全を図ることが第一だ。
 シャルルのクロスボウの腕前は、前回の戦闘よりも格段に向上していた。短時間とはいえ、この奇襲の前にした練習のおかげだ。
「慣れ始めが、油断して一番危ないときだから、気をつけろよ!」
ウィリアムが、矢をつがえながら言った。
「わかってるよ!」
敵との距離を測りつつ、そう言い返すシャルル。目の前に戦いに熱中している感じだ。
 短筒を扱うメアリーは、1人殺すたびに疾走する。なにせ、短筒に弾を込めるのに、少し時間がかかるからだ。そのあいだは無防備なわけだが、疾走と弾込めを素早くおこなっている彼女の姿は、とても格好良く見えるものがあった。また彼女は、自分の身だけでなく、主人であるウィリアムの身も守る必要がある。かなり大変であるに違いない。
 ただ、ウィリアムは、それが余計なお世話とばかりに、堂々と戦い続けていた。長弓の腕前を過信しているわけではなかったが、彼は自信を持っていた。次々に矢を放ち、敵の急所に命中させていく彼。この勢いだと、背負ってきたたくさんの矢を、じきに使い切ってしまいそうだ。とはいえ、地面に刺さっている矢を再利用してでも、彼は戦い続けるだろう。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん