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愛憎渦巻く世界にて

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   ギギギギギッ!

 大きな門のすぐ横にある通用口のドアが開いた。そこは、こういうときのために、人が通れるよう設けられているものだ。ただ、門の防御力に関わるため、通用口は狭い……。そのため、伝令は頭を低くして通った。これでやっと、首都に入れたというわけだ。伝令が通ると、門番はドアを素早く閉めた。
「この髪と目を見れば、ゴーリ軍じゃないとわかるだろ?」
伝令はそこにいた門番に、そう言わずにはいられなかった。
「……悪いけどね。そこまで気にする余裕なんて無いよ」
力無く門番は言った。
 その初老男性の門番が被っているヘルメットは、へこみだらけでボロボロだった……。口調も同じようにボロボロだ。そんな門番に伝令は、それ以上の文句は言えなかった……。

「それで? どこへ行くんだい? 誰あてにしろ、今も生きているかどうかはわからないぜ」
門番は、コゲだらけのイスに座ると、物珍しげに尋ねた。
「…………」
しかし、伝令は無言で、荒れ果てた首都を見回していた……。攻撃によるひどい荒廃具合に、彼は反応に困っている様子だ。すでに予想できていたこととはいえ、タカミ人である彼にはショックだったらしい。
 伝令は自分の仕事を思い出すと、改めて手紙の宛先を見る。ビクトリーからウィリアム宛の手紙だった。彼がまだ死んでいないことを、心の中で祈っているようだ。

   ドドドドドドドドドドドドドドドッ!

 まずどこへ行くべきかを伝令が考え始めたとき、地響きが鳴り始めた……。振動も感じる。それらは、どんどん大きくなっていく……。バケツの中の水が、パシャパシャと小刻みに揺れていた。
 しかし、あるときを境に、音と振動が収まり始めた。気になった門番が、のぞき窓から外の様子を伺う。
「おいおい、あいつらどこへ向かっているんだ……」
のぞき窓で外を見た門番が呟いた……。
「お、俺にも見せてくれ!」
気になった伝令は、自分ものぞき窓から外を見せてもらった。

 ……ゴーリの大軍が大急ぎで移動していたのだ。しかし、彼らが向かう先はこの門へではなく、逆方向の外壁へだった。突然の命令だったらしく、多くの兵士は眠気に苦しんでいるようだ。体育のランニングを、嫌々こなしているようにも見える……。
 伝令は役目を忘れて、異様なその光景を眺め続けていた。門番は、「嫌な予感がする」と呟く。
 それから少しすると、日光が彼らを照らしつける。東の地平線から、太陽がゆっくりと姿を現し始めていた。その日の出は、決死の奇襲作戦の始まりを、ゲルマニアたちに伝える……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん