愛憎渦巻く世界にて
「奇跡だと!? 私を信用していないということか!?」
自分のプライドを傷つけられた彼女は、さらに詰め寄る。
危険に思った警備兵が、彼女の前に立つ。しかし、国王は手を振って、兵士を脇へどかした。
「おまえを信用していないわけではない。……実は今、ゴーリ側に交渉の打診をしているところなのだ」
「余計な波を立てるなということか!?」
「……まあ、そういうことだ」
国王はそう認めるしかなかった……。大臣たちに緊張が走る。
「この一方的な状況で、彼らが交渉に乗るとでも思っているのか!?」
「我々同様、彼らにも限界がある。嫌でも交渉に乗るさ」
「ついこのあいだ、あなたは『ここで戦うことを止めれば、死んだ者たちの死を無駄にすることになる』と言っていたではないか!」
「…………」
国王は返す言葉が無かった……。
「もういい! あなたのお許しが無くても、この作戦を決行する! このままでは、飢え死を待つだけだ」
彼女はそう言い切ってみせる。そして、反応を待つことなく、回れ右をし、部屋の外へ歩き出す。
「おい!!! 勝手なことをするな!!!」
大臣の1人が叫ぶ。しかし、彼女の足は止まらない。
「おい止まれ!!!」
「放っておけ!」
呼び止めようとする大臣を、国王が止めた。その大臣は、黙り込むしかなかった。
謁見室から出たゲルマニアを、シャルルたちが出迎えた。
「残念だったな」
ここで聞き耳を立て、一部始終をすべて聞いていたようだ。
「大丈夫だ。聞いていたと思うが、私は決行するぞ。たとえ私1人でもな」
彼女は本気だった。
「やめておきなさいよ。通り魔が暴れているようにしか見えないと思うわ」
この状況でも、メアリーは皮肉を飛ばしてみせた……。
「フン!」
そして、いつもの反応を返したゲルマニアであった。
「ぼくも戦うよ。それでウィリアム、もしものときはマリアンヌのことを頼む」
シャルルは、隣りのマリアンヌを気遣いながら言った。
「私も戦おう。寝取りプレイの趣味はないからな」
いつも通り、余計な発言を忘れないウィリアムであった……。
「ゲルマニアさん! 兵士さんたちに志願を呼びかけてみてはどうですか? 私が責任を持ちますから」
マリアンヌがそう申し出てくれた。