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愛憎渦巻く世界にて

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「わ、罠にかけられてしまったようです……」
副官は、おそるおそる言った。
「それは災難だっただろうが、なぜ引き上げたんだ!!! 数で押し切れ!!!」
激怒し続ける兄君。
「落ち着いてください。危険を冒さなくても、我々は勝利できます」
彼を宥める副官。戦よりも兄君の扱いのほうが大変そうだ。
「どうやってだ!?」
「このまま兵糧攻めに持ち込めばいいだけです」
「……勝てるのだろうな?」
落ち着き始めた兄君。
「もちろんです。陣地からの攻撃は継続いたしますし。……ただ」
「ただ?」
「……ゲルマニア様を見殺しにしてしまいます」
副官は小声で言った。彼女に対しての申し訳なさが伝わってくる。
「仕方ないだろう。戦争に悲劇は付き物だ」
ところが、兄君は乗り気な様子だった……。自分の妹であるゲルマニアが可哀想だとは、少しも思っていないらしい……。
 彼は、ドサクサに紛れて、彼女を殺してしまうつもりのようだ……。以前から、強い存在である彼女にライバル心を抱いていたらしい。



「…………」
数人のゴーリ兵が、テントの出入口で聞き耳を立てていた……。
「マジかよ」
「ゲルマニア様を助けないつもりだ……」
兵士たちは、信じられない様子で顔を見合わせている。
 少なくとも彼らは、兄君よりもゲルマニアのほうを崇めていた。そのゲルマニアを見殺しにするのだから、彼らが動揺するのは当たり前であった。

「なんとかできないものか」
「どうやってだよ?」
この話は、たちまち陣地内に広まり、不穏な空気が漂い始めた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん