愛憎渦巻く世界にて
ガラガラガラガシャーーーン!!!
とうとう蝶番が壊れ、扉が押し倒された。凹んだ鉄製の扉は、うるさい金属音を立てる。
そして、扉があった門の下には、破壊槌が鎮座していた。補強された丸太が、破壊槌の中でまだ揺れていた。
「やったぞ!!!」
その丸太を揺らしていた兵士たちが、歓声を上げた。
「引け―――!!!」
合図の後、破壊槌は後退していく。
いよいよ、敵軍団が首都に突入してくるのだ……。
「私の合図があるまで行動するな!!! 敵を引きつけるのだ!!!」
ゲルマニアが叫んだ。門の周辺で展開する兵士たちは、黙ってうなずく。敵軍団を分断するための丸太を倒す者たちは、侵入してきた敵に気づかれぬよう、丸太のそばで息を潜めていた。
彼女の作戦は、順調に進んでいる。
「突撃ーーー!!!」
門の向こう側から、指揮官の声が聞こえてくる。
「うおーーー!!!」
先頭の兵士が少し怯えていたものの、敵軍団は首都に入っていく。輝く夕焼けの光が、鎧にギラギラと反射している。
「うわ……」
ゴーリ軍の猛烈な勢いに、ムチュー兵たちは嘆息を漏らした。ゲルマニアの作戦があるとはいえ、恐怖心を感じたのだ。
「まだ攻撃するなよ!」
ゲルマニアは、周囲の兵士たちに言った。堂々としている彼女に、兵士たちの恐怖心は和らぐ。
「進め進め!!!」
無我夢中に、前進し続けるゴーリ兵たち。左右の柵など無視して、ゲルマニアたちがいるバリケードへ進んでいる。
彼らは、自分たちの勝利を確信していた。そのため、罠にかけられているとは思っていない。門の両側の死角に、自分たちを分断する丸太があるなど、まったく気づいていない様子だ……。
「今だ!!! 倒せ!!!」
頃合いを見て、ゲルマニアが大きく叫んだ。待ってましたといわんばかりに、丸太係が仕事を始める。
「えいや!!!」
勢いよく倒される2本の丸太。何人かの敵兵がようやく、罠にかけられたことに気づいた。だが、もう遅い。