小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

愛憎渦巻く世界にて

INDEX|217ページ/284ページ|

次のページ前のページ
 


「ゲルマニア姫!!! お待たせしました!!!」

 馬に乗ったクルップが、別の馬を引いてやってきた。
「ギリギリだったぞ!」
「すみませんね。町の連中が、勝手にバリケードをあちこちに築いてやがったもので」
ゲルマニアはクルップから、馬の手綱を受け取ると、すぐに騎乗した。
 2人とも、ゴーリ時代と同じく、騎乗して戦うつもりであった。初めて乗る馬だが、動きは安定している。
「なかなか良さそうな馬だな」
「馬屋の男によると、この国で2番目の良馬とのことです。1番は国王の馬でしょうね」
「では私が、この馬のほうが1番にふさわしいということを、証明してみせよう」
ゲルマニアは、自信満々にそう言ってみせた。
「……あと、新しい部下たちも連れてきましたよ。少ないですが」

 王城のほうから、20人ほどの騎兵が走り込んできた。悲しいことだが、今の首都で騎乗戦闘をこなせる兵士は少なかった。
「これだけいれば十分だ」
しかし、ゲルマニアはへこたれない。
「いいか!!! 私の後に続くんだぞ!!!」
「ハイ!!!」
ゲルマニアの大声に答える騎兵たち。もうすっかり、ゲルマニアの部下と化している。
「……少し懐かしく感じるな」
ゴーリ時代を思い出した彼女は、静かにそう呟いた。一昔前まで、彼女は反対側の立場で戦っていたのだ。
 後ろめたくなった彼女は、ムチュー兵のヘルメットを被り、ゴーリ人だとわかりにくくした。クルップも同じ気持ちらしく、それに習う。

 ――だが今は、のんびり昔話を語り始める場合ではない。破城槌が、扉をノックし続けているのだ……。
 扉の表面は、衝撃で膨らんでおり、亀裂が走り始めていた。さらに、蝶番は変形してしまっている。
 もはや、いつ扉が倒れてもおかしくない状況だ……。



「シャルル、もう戦えるか?」
長弓を構えながら、ウィリアムがシャルルに言う。
「使い方は覚えた。とにかく戦うよ」
シャルルは、両手にクロスボウを持っていた。
 当然と言えば当然の話だが、ウィリアムやメアリーと同じく、彼もここで戦うつもりだった。剣しか持っていなかったが、ウィリアムがどうやってか、クロスボウを「確保」してきてくれたのだ。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん