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愛憎渦巻く世界にて

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「…………」

 しかし、国王は「いったい、何を言い出すんだ?」という表情で黙っているだけだった……。国王妃は、キチガイを見るような目つきでウィリアムを見ており、それに気づいたメアリーが、国王妃を睨んでいた……。
「どうなのですか?」
ウィリアムが、しびれを切らして言った。
「……申しわけないが、その願いは叶えられない」
国王はきっぱりとそう言った。先ほどとは違い、声に威厳が感じられた。
「なぜです?」
ウィリアムは納得できないという感じで、国王に詰め寄った。
「それでは、我が国が降伏するようなかたちになってしまう」
国王が首を横に振りながら言う。
「降伏ではなく、勝敗の無い停戦です!」
ウィリアムが必死に言う。彼は半泣きになっていた……。
「それは形式的な問題だ。先に申し出たほうが負けなのだ」
国王はそう言うと、さらに言葉を続けようとするウィリアムをなだめた……。メアリーが、ウィリアムの背中を優しく叩く。ウィリアムは、うつむいて立ったまま、静かに泣いていた……。

「……しかし、なぜ君がここまでするのだ?」
国王がウィリアムに、なぜこの戦争を止めたいのかを尋ねた。ウィリアムは静かに口を開いた。
「……それは、」
「国王陛下、大変です!!!」

 突然、近衛兵の1人がノックもせずに入ってきた……。この近衛兵は、違う場所にいて、国王が来客の応対をしていることを知らなかったらしく、部屋に入った途端、しまったという表情をした……。
「何が大変なのかね?」
国王は入ってきた近衛兵に尋ねた。
「例の地下室に向かったマリアンヌ王女付きのメイドが戻ってきません!」
近衛兵はそう報告した。国王はため息をついた。
「マリアンヌと話しこんでおるのだろう?」
「見に行かせた近衛兵も帰ってきません」
「……では、すごく話しこんでおるのだろう」
国王はめんどくさそうだった……。
「久しぶりの挨拶を兼ねて、私が見に行って参りましょう!」
ウィリアムが元気よくそう答えた……。さっきのは嘘泣きだったのではないかと思わせるぐらいだ……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん