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愛憎渦巻く世界にて

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「伝令です!!! 大事なお話があります!!!」
今度は、そのバルコニーに向かって呼びかけた。警備の兵士たちがいるかもしれないからだ。
「おい、うるさいぞ!!!」
「マリアンヌ様のお話よりも大事な話などあるか!!!」
呼びかけは届かなかった上に、近くにいた人々から怒られてしまった……。しゅんとなる伝令……。

「大事な話ってなんですか?」
そんな哀れな伝令に話しかけたのは、シャルルだった。彼のそばには、ウィリアムとメアリーがいた。彼らは、伝令が必死に呼びかけているのを見て、気になったようだ。
「ゴーリ軍がやってきたんだ! それも大軍だ!」
ようやく伝えられる相手が見つかった伝令は、嬉しさのあまり、初対面の相手に喋ってしまった。
「大軍って! どれぐらいの!?」
事の重大さを知ったシャルルは、伝令に問い質す。
「そ、それは……」
うっかり喋ってしまったことに気づいた伝令は、それ以上は喋るまいと、口を閉ざす。
「それは一大事だな。すぐ皆に聞いてもらわなければ。メアリー?」
冷静なままのウィリアムは、メアリーに何かをお願いした。
「わかりました。マリアンヌ様が驚かれないといいのですが」
彼女も冷静なままだ。上着の中から、短筒をそっと抜き、上に向けた……。

   パーン!!!

 乾いた銃声が鳴り響く。次の瞬間、その場はウソのように静まり返った……。群衆の視線が、マリアンヌからメアリーのほうへ、一気に移る。まるで、学校の授業に遅刻してきたようだ。
 マリアンヌは、話すのを止めていた。ただ、幸か不幸か、銃声はもう聞き慣れていたので、きょとんしているだけだ。
「これで聞こえますよね?」
ウィリアムは伝令に言う。
「え、ええ」
近くで銃声を鳴らされたため、伝令の表情は、驚愕状態のままになっていた……。

「ゴーリ王国の大軍が、この首都に接近してきています!!! 見渡す限りの大部隊でした!!!」
静寂の中、その場で叫ぶ伝令。本来ならば、王城で伝えるべきことだ。ただ、あまりに異様な状況のせいで、慌ててしまったようだ。
「なんだと!!!」
どうやら、国王の耳にも届いたらしい。
「国王陛下、落ち着いてください! 敵軍が首都に接近したのは、今回が初めてではありません!」
近くにいた大臣が、王様を落ち着かせる。それは事実で、その度に撃退には成功していたのだった。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん