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愛憎渦巻く世界にて

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「お父様を悪人にしたくないのです!」
マリアンヌもそのことを忘れている様子だ。
「私が悪人に? なぜそうなるのだ?」
「大義が無いのにを人を殺すなんて、悪人がすることだからですわ!」
マリアンヌと国王は、また激しい口論を始めてしまった……。

 ゲルマニアをひざまづかせている2人の兵士は、ポカンとしており、彼女を押さえている両腕から力が抜ける。そのおかげで彼女は、気持ちを落ち着かせることができた。やろうと思えば、この2人の兵士を振り払って、床に落ちている国王の剣を拾い、そのままここで暴れることができた。ただ、助けてくれたマリアンヌのために、このまま様子見をする。


「一体どうなっているんだ?」
「そういえば、昨日もゲルマニアを庇っておられたぞ」
「マリアンヌ様はご乱心か?」
「噂によると、よからぬ連中と遊び歩いていたらしいが、ほんとなのか?」
マリアンヌがゲルマニアを助けたことに、人々は戸惑いを隠せなかった。互いに顔を見合わせ、理由を考えたり、投石されるゲルマニアとクルップをマリアンヌが庇った件を思い返していた。
「やはり、我々は騙されているんじゃないのか?」
「そうだ。踊らされているだけなんだ」
戸惑いの空気は、まずい展開へとまた持っていく。実は、マリアンヌたちムチュー王室とゲルマニアたちゴーリ王室は仲良しで、この戦争は両方の王室が楽しむゲームでしかないという話まで浮かぶ。ただの陰謀論としか思えないが、人々は納得してしまい始める。


「……国王陛下。このままではまずいです……」
大臣の1人が、口喧嘩を続ける国王に言う。
 それを聞いた国王は、喋り続けるマリアンヌを尻目に、人々の様子を伺う。そして、展開のまずさに顔を歪ませると、
「まったく! おまえのせいだぞ! どうするつもりだ!?」
マリアンヌに言葉をぶつける。
「このままでは内乱だ! このままおまえと話していたら、国の終わりだ!」
拾い上げた剣を構え、マリアンヌの目の前に立つ国王。彼女のすぐ後ろには、ゲルマニアが座っている。
「そこをどくのだ!!!」
「嫌ですわ!!!」
国王の前に立ちはだかるマリアンヌ。彼女から、ゲルマニアを守り抜く意志が伝わってくる。
「仕方がないな。おい、マリアンヌをどかせ!」
すぐ近くにいた兵士に、彼女をどかすよう命令した。
 国王命令を受けた兵士は、気が進まない様子だったが、マリアンヌをどかすために、彼女の両肩を掴む。
 だが彼女は、それを勢いよく振り払い、
「放して! 私がみんなを説得してみせるわ!」
そう言い切ってみせた。
「なに!? おまえが!?」
国王は思わず吹き出した。マリアンヌには絶対不可能だという調子だ。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん