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愛憎渦巻く世界にて

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「これはまずいな……」
ウィリアムが小声で呟いた。
 シャルルたちは、人々から少し離れたところにいたのだが、殺意じみた熱気が、人々に広がっていくのがわかった。シャルルたちは、それに追いやられたかのごとく、後ずさりしてしまう……。

 高まる人々の熱気に追いやられてしまったのか、国王はたじろいだあげく、
「ではこの場で、このゲルマニアを死刑に処す!」
などと言ってしまった……。本心からの言葉ではないようだったが、もう後の祭りだ……。
「殺せ!!! 殺せ!!!」
「そこから突き落とせ!!!」
人々の殺気じみた熱気は最高潮に達する……。今さら、前言撤回などできる空気ではない。

「ゲルマニアよ。すまぬな」
国王はそう言うと、近くにいた2人の兵士にゲルマニアを拘束するよう命令する。そして、ムチュー王室の紋章が刻印された剣を抜いた……。自らの手で、ゲルマニアを殺すつもりなのだ。
 2人の兵士はゲルマニアに飛びかかり、彼女をその場にひざまづかせた。国王は剣を構え、刃先をゲルマニアに向ける。
「オイ!!! これからも『臭い物には蓋をする』でやり過ごすつもりか!!! 自分の娘にもしたように!!!」
ゲルマニアが国王を見上げながら叫ぶ。彼女の言葉を聞いた国王は、思わず動きを止めた。
「……ど…どういう意味だ!?」
国王の声を振るえていた……。痛いところをつかれてしまったという感じだ。
「自分でもわかっているはずだ!!! ろくに考えもせずに、ジャマな人間はすべて、自分の前から消してきたんだろう!!! そうすれば、楽に問題解決できるからな!!!」
「黙れ!!!」
ゲルマニアの主張に、国王は声を荒らげる。痛いところをつかれてしまい、怒っているようだ。
「他にいい方法があるのなら、教えていただきたいものだ! 私は最善を尽くした!」
国王は自信ありげに言葉をそう続けると、これ以上は時間の無駄だと思ったらしく、
「これが最善の方法なのだ!」
両手で剣を大きく振り上げた。このまま振り下ろされれば、ゲルマニアの頭は2つに分かれるだろう……。
「許せ! ゲルマニアよ!」
国王は剣を勢いよく振り下ろす。
「ダメ!!!」
そこへマリアンヌが飛びこんできて、国王に思い切り体当たりを喰らわせた。国王の両手から剣が離れ、大理石の床に落ちて、うるさい音を立てる。
「マリアンヌ! この期に及んで何のつもりだ!?」
国王は、人々が見ていることなど忘れた様子で、マリアンヌを怒った。マリアンヌは、国王にゲルマニアを殺させまいと、彼女の前に立っている。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん