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愛憎渦巻く世界にて

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第31章 テンキ



 ムチュー王国の首都は、開戦以来の大騒ぎとなっていた。戦争の大義に疑念を抱いた人々が、王城の城門にどんどん集まっていく。集結した群衆の数と勢いは凄まじく、城門を守っていた兵士たちはそれに圧倒されてしまう……。
 身の危険を感じた兵士たちは、小さな通用口から城門の向こうへと逃げていく。そして、通用口をしっかりとロックし、10メートルほどの高さがある城門を、不安げに見上げていた。
 先頭にいる人々は、城門を叩きまくる。揺ら揺らと前後に微動する城門。木製だが、重い城門だ。それでも兵士たちは、群衆に城門を破られてしまうことを恐れずにはいられない。その恐怖心は、兵営にいたジャックたちが応援に駆けつけてきても和らぐことはなかった。



 城門での大騒動は、すぐに謁見室の一同にも伝わる。そのときも、マリアンヌと国王との激しい口論は続いていた。説明しがたいほどに、話がややこしくなっており、なかなか先に進まない。さらなる悪化を防ぐために、それ以外のゲルマニアや大臣たちは、あえて口を閉ざしていた。
 そんなときに届いた知らせに、マリアンヌは喜び、国王は激怒した。
「民がなぜ知っているんだ!? 誰が奴らにバラしたんだ!?」
国王は大臣たちをギロリと睨みつける。疑われていることに気づいた大臣たちは、一斉にそれを否定した。
「おそらく、ウィリアムたちだろう」
ゲルマニアがそう告げると、国王は彼女を睨んだ。
「……まったく勝手な皇子だ。この戦争の原因のくせにだ」
国王はウンザリ顔で、一同を一瞥する。
「原因は彼にもあるが、それだけではない。この戦争のそもそもの原因は、我が国と貴国とが、強者であるタカミ帝国との同盟を競い合ったからだ」
ゲルマニアが国王に言ったが、本人は聞いていない振りをしているだけだ。しかし、彼女の発言がは彼の怒りのバローメーターを押し上げていた。
「国王陛下! まずは、民を落ち着かせなくては!」
大臣の1人が、彼の気を逸らそうとする。
「……そうだな。あのバカ騒ぎを早く鎮めなくては」
彼はそう言うと、玉座のイスから立ち上がり、室外へ歩き始める。怒りは和らいだようだが、疲れは隠せていなかった。さすがの彼も、長年の戦いに疲れてしまっているようだ。
 だが、そんな状況でも彼は、自分が国王であることを忘れてはいなかった。彼がしっかりとした足取りで、謁見室から出ていくと、大臣たちがそれに続く。マリアンヌとゲルマニアは、その場に残されたが、やはり居ても立っても居られない様子だ。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん