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愛憎渦巻く世界にて

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 すっかり困り果てた彼らが、最終的に考えついた手段は、
「誰でもいい!!! ここに集まってくれ!!!」
多くの人びとが行き交うこの場で、この戦争の大義が無効であることを暴露してしまうことだった……。
 ただし、これは賭けでしかなかった。それでも、提案したウィリアムは、この物語の主役でもないのに、やる気で満ち溢れていた……。彼は、噴水の囲いの上に立っている。

 いきなり何事かといった感じで、人びとがウィリアムの前に集まってきた。タカミ人が珍しいからという理由もあったが、戦争で疲弊している彼らの顔には、救いを求める心情が浮き出ていた。ワラにもすがるたいという感じだ。
 ちなみに、シャルルとメアリーは、黙って彼の近くに立っていることにした。
「この戦争に大義はもう無いのだ!!! あなた方がゲルマニアを殺しても、ゴーリ王国の連中がマリアンヌ姫を殺しても、私の祖国タカミ帝国は同盟を結ばない!!!」
彼は結論から話し始めた。最初に結論から話し始めるのは、良いスピーチ方法だといえる。
「…な…なにを言っているんだ!?」
「そんなこと…あってたまるかよ!!!」
反発の声が人々から上がったが、これは想定内であった。ウィリアムの顔は平然としている。
「私の話を信じないなら、それでもいい!!! どちらの国が戦争で滅びようとも、我々タカミ人には関係無いのだからな!!!」
ウィリアムは、冷たくそう言い放つと、何事も無かったかのように囲いの上から降りようとした。すると、
「ちょっと待ってくれ!!! 最後まで聞こうじゃないか!!!」
「それもそうだ!!! 詳しく聞かせてくれ!!!」
人々がウィリアムに、話の続きをせがんできた……。
 ウィリアムは、わざと話を中途半端に打ち切るようにして、人々が話の続きをせがむよう誘導したのだ……。
「それなら仕方ない。詳しく話してやろう」
ウィリアムは上から目線な口調でそう言うと、人々のほうに向き直った。そして、深呼吸をしてもったいぶった後で、話し始める。ここからが正念場だ。

 ウィリアムが集まった人々に喋る光景は、まさに大演説といった感じであった……。理路整然と熱心に話すその姿は、まるで皇帝のようだと、メアリーはシャルルに自慢げに話していた。しかも、感動で今にも泣き出しそうなほどである。人々はもちろん、シャルルやメアリーまでもが、ウィリアムの言葉を一言も漏らさずに聞き入っていた。
「何事だ!?」
ウィリアムが話し始めてからしばらくすると、この噴水広場での騒ぎを聞きつけたパトロール中の兵士たちが集まってきた。だが、人々は兵士たちのことなど気にもとめずに、ウィリアムの話に集中している。
「まったく! 勝手なことを!」
「タカミ人でも許さんぞ!」
騒ぎ自体にすっかりうんざりしている兵士たちは、すぐに人々を解散させ、ウィリアムを黙らせようと思ったが、どんな話なのかをとりあえず聞いてみることにした。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん