小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

愛憎渦巻く世界にて

INDEX|191ページ/284ページ|

次のページ前のページ
 


 その翌朝、ムチュー王国首都の王城では、ゲルマニアが謁見室へ連行されていた。
 手足を手錠と足枷で縛られているゲルマニアは、3人の屈強な兵士に連れられて、玉座に座る国王の前に立たされる。国王の右側には大臣たちが立ち、左側には王族が立っているのだが、その王族の中にはマリアンヌの姿もあった……。彼女はゲルマニアに対して、気まずそうにオロオロしている。
 この戦争の決着はもう着いたようなものだから、彼女がまた地下牢送りにはならなかったと言えるが、国王がすでに大義が無効であることを知っているからだとも言えた……。

「おまえたちは下がってよろしい」
国王はゲルマニアのそばにいる3人の兵士たちに、謁見室から出るよう告げたが、彼らは戸惑う。ゴーリ王国屈指の強さであるゲルマニアは、恐ろしい存在だと国中に知られていたからだ。
「心配することはない。もう下がれ」
国王が再度そう告げると、彼らは謁見室から出ていく。
「おまえたちも出ていってくれ」
国王は次に、謁見室で警備に立つ兵士たちにも、謁見室から出ていくよう促した。
「お言葉ですが、国王陛下! 危険です!」
兵士の1人がそう言ったが、国王が再度促すと、兵士たちは謁見室から出ていった。
 これで謁見室にいるのは、国王たち王族と数人の大臣とゲルマニアだけとなった……。国王も大臣も初老なので、彼女はやろうと思えば、手足が不自由なままでも1人ぐらいは殺せそうだ。もちろん、マリアンヌの目の前でそんなことをするはずないが……。



 一方そのころ、ゲルマニアと同じく拘束されたクルップは、王城の敷地内のはずれにある監獄に放り込まれていた。薄気味悪いその監獄には、クルップだけでなく、多くのゴーリ軍捕虜が収容されている。
 彼は、捕虜になってしまったことを恥じていたが、それよりも不満の気持ちのほうが大きかった。
 なぜなら、普通の兵士たちの捕虜と同じように扱われているからだ……。貴族出身である彼が、中流階級以下の兵士たちと同じような待遇であることに不満を抱いたのだ……。
「おい!!! オレは貴族の人間なんだぞ!」
10人ほどいる雑居房にいるクルップは、通りがかった看守の兵士に抗議した。しかし、その兵士はクルップの抗議の意味がわからなかったらしく、首をかしげながら、
「貴族の人間だったら、何だというんだ?」
そう尋ねた……。どうやら、本当にわからないようだ。
「……えっと、それはだな……」
兵士の返事がこんな質問で返ってくるとは思わなかったクルップは、どう答えればよいのかがパッと思いつかなかった……。「貴族は偉いからだ」という単純な答えで良かったものの、自分から自分は偉い存在なのだとは言いづらい……。
「それよりだ! 貴族のオレをこのまま優遇しなかったら、後で痛い目を見るのはおまえなんだぞ!?」
良い答え方が思いつかなかったクルップは、兵士の質問を無理やり脇にどかし、そう脅しつけた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん