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愛憎渦巻く世界にて

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第30章 ナガレ



 ゴーリ王国中が、開戦当初のような強烈な戦意で満ち溢れた……。特に、城下町はすごいものであった。騎士や兵士たちは、剣や槍の刃を磨き上げ、弓の張り具合を点検したりしていた。
 泥沼化している戦争に疲弊していたはずの彼らを突き動かしているのは、もうすぐ勝利だという高揚感と、大事な姫君であるゲルマニアを救出せねばならないという使命感からであった……。
 このあいだのマリアンヌ処刑未遂事件があったものの、ゲルマニアを慕う者たちは多かった。彼女の元部下である騎士たちや、彼女とともに戦ったことのある兵士たちが中心だが、ゲルマニアに憧れる新兵も多く、それは男女問わずの大人気であった。中には、彼女の兄君ではなく、彼女が次の国王になるべきだと公言する者もいるぐらいだ……。

 彼らをこれから指揮するゲルマニアの兄君は、彼女の人気具合が普段から気に食わなかったが、今はガマンだと自分に言い聞かせていた……。
「えーと、準備が整った部隊からどんどん出発させろ!」
「ハッ!」
初めての戦に慣れない様子で、兄君は副官に命令する。彼は、数人の護衛兵のとともに、城下町を一望できる城のバルコニーに立っていた。そこからだと、戦の準備具合を一望できる。
 彼は、この最後の戦いだといえる戦に、人生のすべてをかけていた。この戦に勝利すれば、自分の大手柄となり、次の国王に就任することに異議を唱える者などいなくなるであろう。彼の闘志は今や、ゲルマニアのそれと変わらないほどである。


 もうすぐ日付が変わる深夜になると、準備が整った部隊から順に、目的地であるムチュー王国の王城へ向けて出発していく。剣や弓矢といった武器を持った兵士だけでなく、投石機や大砲(タカミ帝国の物よりも古い)といった城攻め用の兵器が、ガラガラと押されて進んでいく。兵力の規模は、どんどん膨らんでいく……。
 しかも、地方の部隊とも道中で合流し、急速に兵力の規模がさらに膨らんでいった……。まるで、国中の人間が大移動しているかのような圧倒される光景だ……。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

剣を持て! 敵の首を斬れ!
剣を持て! 敵の首を斬れ!
そして、進め進め!

敵を我らの繁栄の肥やしにするのだ!!!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 ゴーリ王国の勇ましく不穏な軍歌を、タカミ軍一同が盛大に歌っている。その勇猛さに満ちた歌声は、彼らの目的地であるムチュー王国の首都までにも響き渡りそうなほどであった。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん