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愛憎渦巻く世界にて

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第29章 タチバ



「なんでいっしょについてくるんだ!?」

 マリアンヌとゲルマニアたちを首都へ連行しているムチュー兵たちの隊長が歩きながら、自分たちのすぐ後ろを歩いているシャルルたちに大声で問い質した……。
 シャルルたちは、まるで嫌がらせのような感じで、隊長たち一行にくっついて歩いていた……。誰がどう見ても、ゲルマニアたちを助けるスキを伺っているのだった……。
「我々は、少しのスキなど見せんからな!!!」
隊長は、両手を縄で縛られたゲルマニアとクルップを顎で示しながら、自信満々な口調で言う。当然だが彼は、シャルルたちがゲルマニアたちを助けるスキを伺っているのだとわかっていた。
「たまたま、行き先がいっしょなだけですよ!」
ウィリアムが、「たまたま」の部分を強調して返答する……。
「フン、少しでも変な真似をしてみろ? タカミ人だからって、容赦はしないからな?」
隊長は振り返りながら、ウィリアムに凄む。そんな隊長に、メアリーはギロリと睨み返した。睨みつけられた本人である隊長は、彼女の鋭い睨みに気がつかなかったようだが、すぐ近くにいるシャルルは、彼女の怖い視線に少しだけビビッてしまっていた……。

 今さらどうでもいいことだが、隊長はウィリアムの正体を知らないらしかった。もし、ここで彼が正体を明かせば、ゲルマニアたちの取り扱いをうまい方向に持っていけたかもしれないが、彼は権威を盾にどうのこうのというのは嫌い(この手の人間には珍しいことだが)なので、それはしないつもりのようだ。その代わりに、
「いくらなんでも、それは被害妄想ではないですか?」
と、喧嘩を売るような言葉を送った……。その途端、隊長のこめかみに青筋が走る……。
「あの、せめて城までの同行を許していただけませんか?」
彼が激怒する直前にタイミング良く、マリアンヌが願い出た。
「姫様! なりません!」
彼女の脇に立つ女兵士が諭す。
「こんな方々でも、いろいろお世話になったのです! お願いします!」
マリアンヌは、彼女なりに頭を使い、そう下手に出る。ただ、メアリーは、「こんな方々」という言葉にピクンと反応していた……。
「……わかりました。城まででしたらいいでしょう。ただし、変な真似をしたときは、耐えてくださいね?」
隊長は呆れた表情と口調で、シャルルたちの同行を正式に認めてくれた。まあ、彼が認めなくても、シャルルたちは無理やりこのまま「同行」を続けるだろうが……。

「なあ、ウィリアム。船のビクトリーさんたちはほっといていいのか?」
思い出したように、シャルルが歩きながら尋ねる。
「大丈夫だ。さっきの大広間に、置き手紙をしておいた」
「え? いつの間に?」
「私は君と違って、冷静に物事を考えて行動しているんでね」
「その通りです」
ウィリアムとメアリーのセリフに、シャルルはむっとしたが、
「でも、君のやる気には負けるよ。自分からあんな危険な行動を取れる人間なんて、めったにいないからね」
ウィリアムがうまい褒め言葉を付け加えたので、反論できなかった。おそらく、悪賢いウィリアムは、これをうまく狙ったのだろう……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん