愛憎渦巻く世界にて
「ちょっと!!! 約束が違うではありませんか!!! あの2人のゴーリ人の方々も見逃してください!!!」
マリアンヌはヒステリックに叫ぶ……。しかし、隊長は、何も悪いことはしていないという感じで、
「マリアンヌ様。あの金髪女はゴーリ王国のゲルマニアでしょう? ここで逃がすわけにはいきません。なんかいっしょにいる男も、地位が高そうなので、ついでに捕まえます」
そう言ってのけた……。
どうやら彼らは、この戦争にもはや大義が存在しないことを知らないらしい……。だが、それを教えてやっても、信じてくれるはずは無い……。
「おいおい、どっちみち戦わなきゃいけないのか……」
「こっちのほうが、私は好きだがな!」
ゲルマニアとクルップは、背中合わせで剣を構える。
「お疲れ様でーす」
2人に別れの挨拶をしていくシャルルとウィリアムとメアリー……。
その非情な3人が包囲網から出ると、ムチュー兵たちが一斉に、ゲルマニアとクルップに襲いかかる……。ただし、武器ではなく、投げ縄などの拘束具を手にしていた……。
だが、武器を持っていない相手にも、2人は容赦しなかった……。
……10分ほど戦闘を繰り広げた後に、ゲルマニアとクルップは拘束されてしまった……。ムチュー兵たち側に、10名ほどの死傷者が出た……。
「おまえたちは、王城でそうとう痛めつけられるだろう!!!」
死傷者が大勢出てしまったことに怒る隊長は、縄で両手を縛られている2人を脅した。だが、2人とも平然としている。それが気に食わなかったらしい隊長は、
「ほら!!! さっさと連れて行かんか!!!」
「ハ…ハイ!」
拘束具を持っている兵士たちにあたった……。
見事に約束を破られてしまったマリアンヌは、悔しそうな表情を浮かべながら、2人の女ムチュー兵に両肩を掴まれていた。まるで、容疑者の護送である……。
そして、シャルルとウィリアムとメアリーはというと、ボケーとした表情で、その光景を野次馬のように見ている……。だが、心の中では一刻も早く、マリアンヌとゲルマニアとついでにクルップを助けなければいけないと思っていた……。
一同は、大広間から外に出る。皆、緊張した表情と足取りであった。
外に出てみると、美しい夕焼け空が一同を出迎えてくれた。しかし、誰一人として、その美しさに感動などしていなかった……。