愛憎渦巻く世界にて
「グスッ、グスッ」
いつの間にか、マリアンヌの怒り顔は泣き顔に変わっていた……。頬を涙が伝っている……。
「……もしグスッ……死んだら……どうするつもりグスッ……だったんですか……?」
彼女は泣きながら、目の前のシャルルに問いかける……。さらに、他のメンバーからは、冷たい視線が注がれている……。
「……ご…ごめん!!! ぼくが悪かったよ!!!!!!」
とにかく謝るしかないシャルル。
「土下座しろ!!! 土下座!!!」
「貴様は黙っていろ!!!」
調子に乗ったウィリアムに、ゲルマニアが喝を入れた……。
「本当にごめん!!! 心配かけて」
「もういいです!」
マリアンヌがそう言って止めた。彼女はもう泣き止んでおり、
「でも、これからは私もいっしょに連れて行ってくださいね!」
笑顔でそう付け加えた。
「やれやれ、おまえ1人でも大変なのに、今後はお姫様もいっしょか?」
ゲルマニアが苦笑いしながら言う。
「あっ、みんなもごめんな! 心配させちゃって」
当然のことだが、シャルルは他のメンバーにも謝った。みんな笑いながら許してくれた。もうお互い様だという気持ちなのだろう。
「突撃〜〜〜!!!」
いきなり、たくさんの兵士たちが大広間に、開け放たれた表口から突入してきた……。突然の出来事に、シャルルたちは驚くしかなかった……。あのゲルマニアでさえ、2秒ほど身動きが取れずにいた……。
30人ほどいる兵士たちは、シャルルたちを取り囲む。ゲルマニアが剣を振るって威嚇する。
「こいつら、ムチュー王国の兵士たちですぜ!」
クルップが少し焦りながら言う……。
その兵士たちは、ムチュー王国の正真正銘の兵士たちであった……。兜の下にある髪の色は茶色で、瞳も茶色をしている。そして、鎧には、ムチュー王国の紋章がしっかりと刻まれていた……。
どうやら、最悪のタイミングで援軍が到着してしまったらしい……。
「諦めろ!!!」
「マリアンヌ様を放せ!!! ゴーリ人!!!」
ムチュー兵たちは、シャルルたちに向かって口々に叫びながら、剣や槍で威嚇する。
それに対してシャルルたちは、その場にとどまることしかできない……。なにせ、数に差がありすぎて、いくらゲルマニアやウィリアムでも、30人近くを同時に相手するのは無理だ……。
ただ逆に、ムチュー兵たちも、その場にとどまることしかできなかった……。なぜなら、シャルルたちの側にはマリアンヌがおり、人質になっていると思われているからだ……。