愛憎渦巻く世界にて
「伏せろ!!!」
2人が唖然としたままであることに気づいたゲルマニアは、大声で叫ぶ。脊髄反射的に伏せる2人……。
次にゲルマニアは、近くにあったテーブルを大急ぎで引っ張る。テーブルの上にあった皿が床に落ちるのと同時に、彼女は自分と2人のそばにテーブルを横に倒した。テーブルの上面は爆弾のほうを向いており、その反対側にはゲルマニアたちが伏せている……。
……爆弾の導火線が完全に燃えきった次の瞬間、爆発が起きた……。強烈な爆風が、爆弾の無数の破片があちこちに飛び散らせる……。それらの破片は、壁板に突き刺さったり、死体にめりこんだりした……。そして、大広間に行き場を失った爆風は、窓やドアを内側から吹き飛ばす……。建物の前の通りに散らばるガラス片や木片。部屋全体の空気が揺れているかのようだ。
その強烈な爆風に対して、ゲルマニアは必死にテーブルを押さえていた。それでも、爆風で激しく振動するテーブル。テーブル自体が壊れないよう祈るしかない……。
やがて、振動は収まっていく。爆風が力を失っているのだ。
しばらくして、爆風で宙を舞っていた無数のホコリが着陸し始めたとき、ゲルマニアがテーブルの影から顔を出す。
「よし、もういいぞ」
安全確認をした彼女は立ち上がる。その拍子に、ホコリが少しだけ舞い上がった。
シャルルとウィリアムは、彼女の登場から爆発までの出来事に腰を抜かしてしまっていた……。そんな情けない2人を見たゲルマニアは、あきれながらも半笑いしている。
そのときの彼女の顔は、男顔負けの普段とは違い、年相応の少女らしい可愛げがあった。大変貴重な表情だったわけだが、すっかり腰を抜かしている今の2人には、どうでもいいことである……。
「シャルル様!!!」
「ああ、やっぱりね」
「やれやれ、世話が焼けるな」
ドアが無くなっている表口に、マリアンヌとメアリーとクルップが立っていた……。ウィリアムやゲルマニアだけでなく、彼らもシャルルを探しに来てくれたのだった。
メアリーとクルップは呆れ顔だったが、マリアンヌは怒りで満ちた顔をしている……。シャルルはその顔を見た途端、跳ねるように起き上がった……。怒り顔の彼女は、すごい勢いでシャルルの元へ駆け寄ると、
パチンッ!!!
外にまで響き渡るほどのビンタを彼に喰らわせた……。すぐ隣にいたウィリアムには、それが大迫力だったらしく、驚いた拍子に立ち上がるほどであった……。
「え? え?」
ビンタされたシャルル本人はもちろん、他のメンバーも、マリアンヌの突然のビンタに唖然とするしかなかった……。マリアンヌが暴力を振るうわけないと思っていたからだ……。