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愛憎渦巻く世界にて

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「私を誰だと思っている? タカミ帝国の次期皇帝である私が、そんな血で汚れた物に釣られるとでも思ったのか?」

 ディーブに矢の狙いを定めたままのウィリアムが言い切る。彼の目に、欲の濁りなど無い。
「農民をバカにしているのか?」
……別に農民をバカにする意図は無いと思うが、シャルルも言い切ってみせた。彼の目にも、欲の濁りなど無かった。

 そのときの2人の表情は、欲に負けない真剣そのもので、美しさすら感じられる……。

 だが、ディーブは、2人の真剣さを理解できず、
「で…では、この町に隠してある他の宝も差し上げますので!!!」
譲歩すればいいと考えてしまった……。どうやら彼は、欲に負けないということを理解できないようだ……。

「絶対に断る!!!」

 シャルルとウィリアムは、はっきりと同時に言い切る……。欲に打ち勝つ強さを秘めた口調だった……。

「……そうですか」
2人の強い言葉を聞いたディーブは、残念そうな様子を見せる。
 だが、戦利品が詰まった袋の1つの中から、急いで何かを取り出す……。そして、それを胸に抱え込むと、
「それなら、いっしょに死んでもらいますよ!!!」
そう叫びながら、シャルルとウィリアムに突撃してきた……。
 ディーブが袋から取り出したのは、丸い火薬瓶の爆弾であった……。もちろん、導火線にはしっかりと火がついている。
「そうきたか」
ウィリアムはそう呟くと、突撃してくるディーブに矢を放つ。
 矢は彼の腹に命中したが、なんとそのまま突撃を続ける……。おそらく、ディーブの今の脳内は、アドレナリンで満ち溢れている状態なのだろう。そうでなければ、激しい痛みでのたうち回るはずだ。ディーブは完全に死ぬ覚悟を見せていた。
 彼との距離と比例する形で、導火線もどんどん短くなっていく……。

   シュタン!

 突然、ゲルマニアがシャルルとウィリアムの目の前に現れ、ディーブの首を剣で綺麗に切断した……。まるで大根を1回で切るかのような心地良い音だった……。
 切り飛ばされたディーブの首が、壁に激突して嫌な音を立てる……。首無しとなったディーブの胴体は、突撃の走りの勢いで、前のめりにズサリと倒れこんだ。そして、生前の彼が大事に抱えていた爆弾は、死んだ彼から離れ、床をゴロゴロと転がっていく。
 何の気配も無く突然現れた彼女に、シャルルとウィリアムは唖然と驚くしかなかった……。それも、爆弾のことをうっかり忘れてしまうほどに……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん