愛憎渦巻く世界にて
しかし、シャルルはここで、この2本の手斧を使うことに決めた。壁際まで剣を取りにいっていたら、また同じように剣を交わらせることになってしまい、自分に不利だ。男が剣を床から剣を引き抜こうとしている今は、絶好の攻撃チャンスであった。しかも、この2本の手斧は、床からすぐに引き抜けそうだ。
さっそくシャルルは、2本の手斧を床から引き抜くと、それらで男に反撃を加える。1本は右目に、もう1本は頭頂部に深々とめりこむ……。頭蓋骨がひび割れる嫌な音がした……。
男の頭蓋骨から血が盛大に吹き出す……。まるで、みずみずしいトマトを力いっぱい潰したかのようだ……。盛大な出血のせいで、手斧は真っ赤に染まりきる……。
シャルルは、その男の死を確認すると、壁際に落ちている自分の剣を拾いにいく。そして、剣を持って戻ってくると、激痛でうずくまったままのもう1人の男に剣を振り下ろす……。
男の首が剣に一刀両断され、頭部がボトリと床に落ちる……。頭部無しの状態でうずくまる男の姿は、ローストチキンのように見えた……。
これでシャルルは、1対2という不利な戦闘に勝利したというわけだ!
……そして、最後に残った敵はディープだ……。手下を全員失った彼は、その場にただ立ち尽くしている……。彼の足元には、矢の傷口から出た血が何滴も落ちていた。
「さて、これで終わりだな。君がとどめをさすか?」
ディーブに矢の狙いを定めているウィリアムが、再び剣を構えるシャルルに尋ねる。もはやこの状況なら、シャルルでも簡単にとどめをさせる。彼の敵討ちは、もうすぐ叶うというわけだ!
「と、取引をしましょう!!!」
すると、ディーブが狼狽えた口調で、取引を持ち掛けてきた……。つい先ほどまでの自信は完全に消え失せており、なんと命乞いを始めたのだ……。
「何を言っているんだ!?」
ディーブの命乞いに、シャルルは呆れながら言い返したが、
「い…いい話だと思いますよ!!!」
ディーブはそう言うと、階段を駆け降りる。
そして、階段近くの壁際にまとめていくつも置いてある「戦利品」が詰まった袋に駆け寄った。
「ここに置いてある宝物をすべて差し上げますので、どうかお命はご勘弁を!!!」
叫ぶように言うと、袋の1つを開けてみせる……。中には、銀の食器や宝石などがいっぱい詰まっていた。
ディーブは、戦争に乗じて人々から奪い取った品々を、自分の命を守るために利用する気なのであった……。いわゆる『命あっての物種』というやつだろう。