愛憎渦巻く世界にて
残り3人となったディープの手下の中には、シャルルをこの大広間まで誘い込んだ2人の男がいた。
「よくもハメやがったな!!!」
そのことに気づいたシャルルは、その2人に怒鳴る。
「普通の人間なら、すぐにおかしいと気づくもんだぜ!!!」
「騙されたほうが悪いんだよ!!!」
怒鳴られた2人は、ヘラヘラしながらそう言い返すと、剣をシャルルに向ける。
「ウィリアム! この2人はぼくに倒させてくれ!」
「いいだろう。だが、無理はするなよ?」
ディーブは、シャルルたちがやり取りしているスキに、1階に落としてしまった短筒を上から見つける。そして、
「そこの短筒をこちらへ!!!」
やり取りに参加していない手下の男に命令する。
その男は回れ右をして、ディーブが落とした短筒を拾いに行こうとするが、ウィリアムはそれを見逃さなかった。彼がすぐに放った矢が、その男の後頭部に命中し、仰向けに倒れて死んだ……。ディーブはさらに悔しがるが、それは手下が死んだからではなく、短筒が自分の手に戻り損ねたからであった……。
「てえい!!!」
シャルルは、ターゲットである2人の男に向かって斬りかかる。刃先が向かう先は、右側にいた男のほうだ。男は、自分の剣でそれを受け止めようとする。
「ぐっ!」
男の両手首が、シャルルの剣によって斬り落とされた……。それと同時に、両手で握られていた剣も、床にガチャリと落ちる。両手首を失った男は、とても痛そうにその場でうずくまる……。
どうやら、まだ少年であるシャルルの腕力を過小評価して、剣を強く握りしめていなかったようだ……。その結果、シャルルの剣を受け止めきれずに、両手首とおさらばしたわけだ……。『油断大敵』のわかりやすい例である。
「ウォォォ〜〜〜!!!」
もう1人の男が、大声を張り上げながらシャルルに斬りかかる。シャルルは、それを剣で見事に受け止めてみせた。剣を交える彼らから少し離れた場所で、ウィリアムがシャルルの剣さばきに感心していた。
だが、やはり少年と大人とでは腕力に差があり、シャルルは後ろに押されてしまう……。そして、しまいには、剣を弾き飛ばされてしまった……。金属音を立てながら床を滑るシャルルの剣は、壁際で止まる。シャルルは、剣を拾いにいこうとしたが、
「これで終わりだ!!!」
男が彼の背中めがけて、剣を振り下ろした……。
ところが、幸いなことに、男の剣はシャルルの背中をかすっただけだった。男が勢いよく振り下ろした剣は、床にドンと深く刺さる。シャルルがうまく避けたのだ。
だが、急に変な避け方をしてしまったせいで、シャルルは転倒してしまった。倒れたすぐそばには、先ほどの2本の手斧が、床に刺さっていたので危なかった……。