愛憎渦巻く世界にて
「ハメやがったな!!!」
シャルルは怒りの大声をあげ、剣の刃先をディーブに突きつける。ロウソクのほのかな光が、刃先に反射していた。
そんな中、武器を構えた手下たちが、彼の元へとじりじりと近づいていく。子供1人が相手でも容赦しないという様子だ。
シャルルは、剣をしっかりと構え直した。手のひらに、手汗がどんどんにじみ出る。
「君はまだ子供だからわからないでしょうが、大人の戦いというのは、割り切らないとやっていけないものなのですよ」
ディーブは、やれやれといった調子で釈明する……。当然だが、彼の怒りは収まらず、
「お前を殺す!!!」
復讐の道へと再び歩ませることとなった……。
「その前に俺を殺してみやがれ!!!」
大きめの斧を持った手下が、シャルルに襲いかかる。彼の手首めがけて振り下ろされる斧の刃は、鈍く輝いていた。
「おっと!」
シャルルはギリギリのところで1歩後退して、斧を避けた。空振りした斧の刃が、床板にバキィと刺さる。
「えい!」
シャルルはすぐに、剣を横に振った。まだスピードが遅いものの、剣の刃はしっかりと横線を描き、斧で襲いかかってきた男の首を切断する……。胴体から離れた生首は、汚い床を転がっていった……。
「この野郎!!! よくもやりやがったな!!!」
「半殺しにしてやるぜ!!!」
一瞬の静寂の後、他の手下たちは仲間の死に激怒し、一斉にシャルルに襲いかかってきた……。
「やべえ!」
やみくもに剣を振り回すシャルル。剣の刃で風を切る音が、襲いかかる手下たちを出迎える。
彼は相当運がいいらしく、適当に振り回した剣が、手下の何人かを勝手に斬殺してくれた……。ある手下は、胸部の右半分が切り裂かれ、また別のある手下は、頭蓋骨を中身の脳味噌ごと粉砕されて死んでいる……。どうやら、ゴーリ王国の剣は、良質の鉄を使っていて丈夫らしい。
次々とできあがる仲間の斬殺死体を見た手下たちは、後ずさりをして、シャルルとの間合いを取る。
「喰らえ!!!」
少し離れた所にいた手下の女が、クロスボウで矢を放った。普通の弓矢よりも強力な矢が、シャルルに向かって飛んでいく。
勢いよく飛んできたその矢を避けようとしたシャルルは、その場に尻餅をつく。矢は、シャルルの頭上約10センチを通り過ぎ、彼の背後の壁に突き刺さった。
シャルルが尻餅をついた途端、後ずさりしていた手下たちが、再び襲いかかってくる。仰向けに座っているシャルルは、急いで立ち上がろうとするが、床の汚れのせいで滑り、うまく立ち上がることができない……。
ナイフを持った手下の男が、座ったままのシャルルに押しかかる。その勢いで、剣が手から離れてしまう……。彼の体の上に乗った男は、ナイフの刃先を彼の首元に当て、「さあ、あきらめろ!」と脅してきた。
万事休すである……。