愛憎渦巻く世界にて
「この荷馬車の持ち主は誰なんだ?」
「見つけたらただじゃすまさないぞ!」
兵士たちは荷馬車を調べ始めている。馬は死んでおり、荷馬車に人はおらず、数個のタルが積まれているだけだった。だが、
「……このヒモはなんだ?」
タルの1つに長いヒモが取り付けられていた……。その兵士が手にした部分はヒモの途中で、その先端からは火花が出ていた……。そのタルは、火薬が詰まった爆弾だった……。
「ど…導火線!?」
兵士は目を見開き、思わず声が裏返る……。驚きのあまり、導火線を手にしたまま固まってしまった……。その近くにした兵士たちも、思わず固まる……。
当然だがその間にも、導火線はどんどん短くなっていく……。
「海に飛び込め!!!」
ビクトリーの大声のおかげで、フリーズが解けた。だが、爆弾を持った兵士だけは、そのままの状態であった……。ビクトリーは、その兵士を助けようと、痛みをこらえながら駆け出す。
兵士たちは、大急ぎで海に飛び込んでいく。もちろん、シャルルたちも海に飛び込む。小さな水柱があちこちに立つ。
シャルルは、マリアンヌと共に海に飛び込んだが、着水の勢いで彼女と離れないよう、しっかりと手を握っていた。海に飛び込んだ2人は、手を握り合いながら海中を浮遊する。
……それからすぐ、ふ頭で爆発が起きた……。爆音が海中まで届き、2人はふ頭のほうを見上げる。水を通してうっすらと、広がる爆炎と飛び散る破片が見えた……。