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愛憎渦巻く世界にて

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「おおっ、大丈夫ですか? あの2人の大臣、とんでもないことを言うでしょ?」

 部屋から出てきたシャルルたちに、ビクトリーは開口一番にそう言った。どうやら、あの2人の大臣は、もうビクトリーの声が聞こえないほどの所まで移動したらしい。ただ、士官服の男は、堂々と口走るビクトリーを冷やかに見ていた。
「私は、あなたたちの国を侵略したいとは考えていないですから、ご安心ください」
「何を言っている? 命令が下れば、やらなきゃいけないんだぞ?」
ビクトリーの軽いセリフに、士官服の男がすぐに食いついた。どうやら、ドアの前で聞き耳を立てていたらしく、さっきの一部始終を理解しているらしい……。
「だけどな、ハリアー。その国のお姫様が2人いる前で、そんなことを言うなんてありえないぞ?」
「……それはそうだけどな」
渋々認めたこの男が、港に迎えに来るはずだったハリアーという人物らしい。ビクトリーとは違い、冷戦沈着な堅物だという雰囲気がある。司令官用の服装をキッチリと着こなしおり、汚れなど一切無い。
「さあ、こちらへ」
執事に導かれ、シャルルたちは、ドアの前で引き続き警備するビクトリーやハリアーと別れた。


「なあ、おまえはどっちがいいと思う?」
シャルルたちを見届けた後、ビクトリーがハリアーに尋ねた。
「どっちがいいかと言われれば、武力による介入だろう」
「やっぱりな」
ハリアーの回答を聞いたビクトリーは、苦笑いしていた。
「答えがわかっているなら、質問するな。そもそも、軍人ならば、皆そう答える」
「そうなのか? 俺は、あの子たちが願う平和的な解決のほうがいいと思うね?」
ビクトリーの言葉を聞いたハリアーは、キッと彼を睨む。
「おまえは本当に軍人なのか? 我々軍人は戦うことが仕事なんだぞ? それを」
「タカミ帝国のためではなく、あの2人の大臣のためでも、おまえは戦うのか?」
ビクトリーが小声でそう口を挟むと、ハリアーは「そのまま話し続けろ」と言い終えた……。
 ビクトリーとハリアーは、周囲の確認をした。廊下には誰もいないし、小声ならば、貴賓室の中に聞こえないだろう。
「我がビクトリー家が入手した極秘情報だ」
ビクトリーはそう言うと、軍服の内ポケットから丸めた書類を取り出した。それをハリアーに渡す。

 ハリアーが落ち着いた様子で、数枚の紙に書かれた文字を読む横で、ビクトリーは小声で話し始めた……。
 5分という簡潔な説明だったが、ビクトリーが話し終えるよりも前にハリアーは、この戦争を終結させる手段に対する考え方を、180度変えていた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん