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愛憎渦巻く世界にて

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   シャキンッ!

 だが、ゲルマニアは、申し開きなど無用だという毅然とした様子で、自慢の鋭い剣を抜いた……。敬意を示すために、ゲルマニアは帯剣を許されていたのだ。陸軍大臣と海軍大臣は震え上がり、
「衛兵!!! 衛兵!!!」
必死にそう連呼した……。母国をバカにしたツケを払わせるべく、ゲルマニアは剣を構えながら走り出した。両大臣は、マヌケな声を上げながら、ゲルマニアから必死に逃げようとする。
「止まれ!!!」
クルップが、ゲルマニアに加勢しようかと思ったとき、部屋の衛兵たちが一斉に、ゲルマニアへ狙いを定めた……。最新型の銃である銃剣付きライフル銃から放たれる弾丸は、マスケット銃のそれよりも高速で高い威力を持つ。

「やめろ!!!」

 皇帝のその一声が貴賓室に響き渡る……。衛兵たちは、脊髄反射的に銃口を下げた。
 ゲルマニアは怒り顔のまま、その場で動きを止めた。剣の刃に、天井のシャンデリアの灯が反射している。ただ、ゲルマニアに殺されかけた両大臣は、無様にうろたえており、この場から早く逃げだそうとしていた……。もちろん、皇帝の許しが無ければ、それも無理なことだが。
「ゲルマニア姫、マリアンヌ姫。うちの馬鹿者たちが、失礼した」
皇帝は、バカな2人の大臣がバカな失言をしたことに対して謝罪した。元首である皇帝に謝らせてしまったことに、2人の大臣は生きた心地しなかった。後で処刑されても文句が言えないレベルのことだからだ……。
「謝罪を受け入れます」
「…………」
ゲルマニアは皇帝からの謝罪を受け入れ、剣を鞘に収めた。ただ、マリアンヌは顔を伏せたままだ。非情で残酷な国際関係に直面したことに対して、静かに泣いているらしい……。隣りに座っているシャルルが、悲しんでいるマリアンヌを介抱してやる。
「マリアンヌ姫に落ちついていただくために、少し休憩しようじゃないか?」
皇帝はそう言うと、また執事を手招きした。シャルルたちを客室へ案内させるらしい。とりあえず、戦争終結の方法をめぐる騒動は一時停止したわけだが、再開した場合、どれほどの騒ぎとなるのだろうか……。

「皆様、どうぞこちらへ」
シャルルたちの元へ来た執事は、落ちついた口調で語りかけた。実は、タカミ皇族専属の執事である彼も貴族出身なのだが、あの2人の大臣のように、下の階級の人間をバカにするような性格ではなかった。
「じい、静かな部屋にしてくれよ」
「わかっておりますとも」
執事は、泣いているマリアンヌでもついてこられるぐらいのゆっくりとした足取りで、客室へと歩き始めた。
 シャルルたちが部屋から出るよりも前に、あの2人の大臣が、逃げるように部屋から出ていった。しかも、ドアを開けっ放しにしていったのだが、ドアの前に警備として立っていた男の顔を見て、シャルルたちは少し落ち着くことができた。
 その男はビクトリーであり、先ほど地図を持ってきた士官服の男と、なにか話をしていた。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん