愛憎渦巻く世界にて
「くしゅん!!!」
ウィリアムがクシャミをした……。
「静かにしてください」
メアリーがウィリアムに注意する。
シャルルたち3人は、一目を避けながら、国王を探している。どうやら、ここでもディナーの時間らしく、国王はダイニングルームにいるようだ。そこで3人は、国王の私室でこっそり待つことにし、その部屋へ向かう。
「もし、国王陛下への説得が失敗したら、どうするんだよ?」
シャルルがウィリアムに小声で尋ねた。
「やれやれ、君は自分で考えることができないのか?」
ウィリアムは馬鹿にする口調で、シャルルに言った。
「…………」
シャルルは、気にしていることをつかれてしまったという表情で黙り込んだ。
3人は、T字状のところを横切る。しかし、ウィリアムとメアリーがそこを通り過ぎたとき、下の通路から、巡回の兵士が歩いてきた。
「隠れろ」
ウィリアムが小声でそう言うと、3人は急いで物陰に隠れる。
しかし、シャルルが隠れようと壁にもたれかかった途端、その壁が向こう側に開いた。その壁は緊急避難用の隠し扉になっていたのだ……。隠し扉のすぐ向こうは、滑り台になっていた。彼はその滑り台を滑っていってしまった。
ウィリアムとメアリーも一応助けようとは思ったが、たまたまやって来たその兵士が、その隠し扉の前で立ち番を始めてしまい、シャルルのことは後回しとした……。
隠し扉の滑り台を滑っていったシャルルは、地下通路の床に落ちた。彼は、痛そうに尻をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。そして、自分がどこにいるのかを確かめる。
地下通路は薄暗く、人の気配は無かった。空気は冷たくジメジメしていた。しかし、シャルルは怖がることなく、通路を歩いていく。
やがて、上への螺旋階段が見つかった。シャルルはほっとした様子で、その螺旋階段に向かった。
しかし、螺旋階段のすぐ近くまで来たとき、美味しそうな食べ物の匂いがした。その匂いは、すぐ近くに置いてあるカートから放たれていた。清潔そうな白い布で、何かが覆われているカート。
シャルルはガマンできずに、その布をさっと取り払ってしまう。
布の下には、平民であるシャルルが一度も口にしたことがないような豪華な料理があった……。ビンテージ物の高級な赤ワインもあった。シャルルはその食事を見た途端、腹を鳴らした。そこで彼は、しばらくメシを食べていないことを思い出した。シャルルは、辺りを見回した後……。