愛憎渦巻く世界にて
一方、ゴーリ王国の王城では、ゲルマニアとクルップがディナーを取っていた。彼らの他に、ゴーリ王国の国王とその家族もいっしょにいたが、貴族の長男であるクルップは慣れているらしく、全然緊張していなかった。
ゲルマニアは、派手じゃないシンプルなドレスを着ており、長い金髪を後ろへ流していた。
テーブルの上には、大きいソーセージなどの食べ物や無添加で純粋なビール(第3のなんとかなどではない)があり、ゲルマニアの帰還を祝う宴のようだ。ゲルマニアとクルップはまだ15歳のはずだが、彼女らも普通にゴクゴクとビールを飲んでいた。
「ゲルマニアよ!!! 兄として、おまえのような妹を持つことができて嬉しいぞ!!!」
酔っ払っているゲルマニアの兄が、ゲルマニアに言った。彼は次期国王なのだが、臆病者で、戦場に行ったことがないぐらいだった……。なので、戦好きなゲルマニアはこの兄をよくは思っていなかった……。そのため、ゲルマニアは、
「私が敵を追いかけていたとき、兄上はメイドを追いかけていたのでしょうな?」
そう皮肉を言った……。すぐ横にいるクルップは、笑いをこらえていた。しかし、兄は酔っ払っているからか、気にしていなかった。
「まあまあ、ゲルマニア」
国王がなだめる。ゲルマニアは、仕方ないという感じで黙り、ビールを飲んだ。
「さて、諸君! せっかくの宴の最中にすまないが、重大な話がある!」
国王が真剣な顔つきになったので、ダイニングルームにいた全員の目が国王に向いた。ゲルマニアは、ビールを飲みながら横目で見ていた。
「タカミ帝国の次期皇帝である皇子が、タカミ帝国から逃亡したらしい。つまり、我が国に来ているかもしれないというわけだ」
国王がそう言うと、ゲルマニアとクルップは顔を見合わせた。
「じゃあ、我が国が保護すれば、帝国に貸しができますな!」
兄がドヤ顔でそう言った。「どうだ? いいことを思いついただろ?」という感じだ……。
「兄にしてはいいことを思いつきましたな。兄にしては」
ゲルマニアがまた皮肉を言い、クルップがまた笑いをこらえていた……。兄はゲルマニアを睨んだ。
「しかし、皇子は、私に「チェンジ」と言いやがったような奴ですから、私個人としては、人質にしたほうがいいと思いますが?」
ゲルマニアは国王に言った。ゲルマニアは嫌なことを思い出したという感じで、イライラしていた……。国王は「まあ、それもいいだろう」と答えた。
「おれもおまえをチェンジしたいよ」
今度は兄がゲルマニアに皮肉を言った。しかし、タイミングが悪かったようで、
「なんだと!!!」
ちょうどイライラしていたゲルマニアはブチギレ、剣を抜いて、兄に向かっていこうとした……。すぐにクルップが押し止めた……。しかし、兄は恐怖を顔に浮かべ、国王の後ろに素早く隠れた……。国王の横にいる国王妃は、あきれた表情で、ゲルマニアと兄を見ていた……。