愛憎渦巻く世界にて
「こんな美味しい物があったなんて!」
シャルルは、ガツガツとカートの料理を食べ、赤ワインをボトルからゴクゴクと飲んだ。シャルルはとても幸せそうで、自分が戦争をやめさせようとしていることなど、すっかり忘れてしまっているようだった……。
カッカッカッカッカッカッ!!!
しかし、螺旋階段の上から響いてくる足音で、シャルルは我に返った。彼は、口をふくのも忘れ、隠れ場所を探した。しかし、隠れ場所は……。
「あれ? 今日のディナーは、大きくて重いわね?」
メイドが手押し式のカートを押している。そのカートには、白い布で覆われた料理が乗っているはずだ……。
しかし、料理は乗っておらず、代わりにシャルルが乗っていた……。彼は料理が乗っていた皿の上にうずくまり、布を被って隠れた。しかし、そのカートを、螺旋階段で降りてきたメイドが押し始めてしまったのだ……。シャルルは当然焦ったが、バレていないようなので、じっとしていることにした。
やがて、メイドは、ある部屋のドアの前で立ち止まると、そのドアをノックした。
「どうぞ」
すぐに返事がドアの向こうから聞こえてきた。
メイドはドアのカギを外す。そして、ドアをゆっくり開け、シャルルを乗せたカートを、その部屋の中に止めた。
「いつもより多そうだけど、食べ切れるかな?」
メイドがドアのカギを閉めて立ち去ると、先ほどと同じ声がした。どうやら、カートに用意してあった料理は、この声の主のディナーのようだ。独り言らしい口調や気配から、この声の主の他に人はいないと考えた。
そこで彼は強硬突破することにした……。
「ワッ!!!」
シャルルは、その声の主を驚かせようと大声で叫び、布をぱっと放り捨てて立ち上がった……。
そこにいたのは、マリアンヌだった……。ムチュー王国の王女である彼女は、きょとんとした顔で、シャルルを見ていた……。