愛憎渦巻く世界にて
シャルルたちは、ビクトリーにひきつづき連れられて、ハーミーズ要塞への石橋を渡り始めた。なぜか、ビクトリーとシャルルたちの他に、橋に人の姿は無かったが、要塞に夢中なので、誰も気にしていなかった……。石橋の下は海で、さざなみの音が心地良い。
石橋も、頑強な岩から切り出した石材からできており、橋の防衛陣地として、2つの塔が橋の上に建っている。そして、その2つの塔の間は、船が通過するためのはね橋となっており、今は渡れる状態であった。船の姿は無く、ビクトリーとシャルルたちは、はね橋をゆっくりと渡ることができた。
ただ、はね橋を渡り終えて、要塞側の塔の下をくぐり抜けたときであった……。突然、ビクトリーが立ち止まり、彼のすぐ後ろを歩いていたウィリアムは、彼にぶつかりそうになっていた。
「どうした?」
「…………」
ビクトリーは黙ったまま、ただ前方を見ている……。どうやら、唖然としているようだ……。
シャルルたちは、今度は何事かと、ビクトリーがじっと見ている前方を一斉に見た。
「…………」
すると、シャルルたちも黙るしかなかった……。ウィリアムはクールな表情のままだったが、それ以外のメンバーは、驚きの表情をはっきりと浮かべていた……。
ビクトリーとシャルルたちの視線は、橋の向こうにある要塞の、開いたままになっている門のところで立っている3人に向いている……。
彼らの視線の先には、タカミ帝国の皇帝と皇妃、そして、ブリタニアがいたのであった……。