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愛憎渦巻く世界にて

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「ねえちゃんも飲まないか!!!」

 ビールですっかり酔っぱらった船員のおっさんが、ゲルマニアに声をかけた……。おっさんの手には、なみなみとビールが注がれたジョッキがあり、それをゲルマニアの目の前に突き出す。
 どうやら、ゲルマニアがゴーリ王国の王女であることを忘れてしまうほど酔っぱらっているようだ……。まだシラフに近いらしい船員が、そのおっさんを止めようとしたが、
「いただこう」
その前にゲルマニアが、おっさんからジョッキを受け取り、そのままビールを威勢よく飲み始めた。彼女は、ジョッキのビールを一気に飲み干してしまった……。
「いい飲みっぷりだね!!!」
ゲルマニアの一気飲みに、おっさんは愉快そうだったが、おっさんを止めようとしていた船員は唖然としていた……。
「フンッ、私のほうが早く飲めるわよ! もちろん、量もね!」
またメアリーが余計なセリフを吐いた……。
「なら、勝負するか?」
予想していたこととはいえ、ゲルマニアが応酬のセリフを吐いた……。

 それからすぐに、ゲルマニアとメアリーの飲み比べが始まった……。2人の少女の勇ましい飲み比べに、船員たちは沸き立ち、ビール樽をすぐ近くまで転がしてきた……。何人かの船員は、どちらが先に酔いつぶれるのかを賭けあっている……。
 シャルルたちは、笑ったり恥ずかしがったりしており、勝負の行方を見守ることにした。「おまえも飲め」などと絡まれないように、こっそりとしているしかないのだ。

 そして、30分ぐらいたったころ、ゲルマニアとメアリーは、同時に酔いつぶれてしまった……。勝負が終わり、船員たちは歓声をあげる……。2人ともテーブルに突っ伏して寝ており、急性アルコール中毒にはなっていないと思うが、朝まで起きそうになかった……。
 もう食事を終えていたシャルルたちは、ため息をつくと、ゲルマニアとメアリーをひきずりながら、食堂を後にした……。食堂では、どちらが先に酔いつぶれていたかで、船員たちが言い争い、すぐに殴り合いへと発展していた……。


 食堂から出たシャルルたちは、酔いつぶれて寝ているゲルマニアとメアリーをひきずりながら、ビクトリーを探し始めた。自分たちも、ゲルマニアとメアリーのように、もう寝るのだ。
 幸い、ビクトリーとすぐに遭遇することができた。仕事を終えて、ちょうど食堂に向かうところだったらしい。
「ど…どうしたんですか? その2人は?」
酔いつぶれて寝ているゲルマニアとメアリーを見たビクトリーは、当然の質問をした……。
「ちょっとお酒を飲んでしまってな」
ウィリアムは皮肉をこめて、そう答えた。
「そ…そうですか」
「それで、私たちの部屋はどこだ? もう寝るのだが」
ビクトリーがさらなる質問をしてくる前に、ウィリアムはビクトリーに尋ねた。
「ウィリアム殿下とメアリーには、貴賓室と家来部屋を御用意しておりますが、他の方々にはどうしてもらいましょうかね?」
ビクトリーは、困ったという表情で、ウィリアムとメアリー以外の面々を見ていた。シャルルとクルップはいいとしても、男だらけの船員室にマリアンヌとゲルマニアとメアリーを寝かせるわけにはいかない。それに、マリアンヌとゲルマニアは王女であり、本来なら貴賓室へ通すべきなのだが、この船には1部屋しかない。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん