愛憎渦巻く世界にて
「え〜、肥やし屋で〜す! し尿の回収に来ました〜!」
甲高い声を出して、王城の門の前にいたのは、シャルルだった……。彼は荷車を引いており、荷車の荷台には3つの樽があった。肥やし屋のフリをして、王城に侵入しようというのだろう……。漫画のような作戦だ……。シャルルは緊張していたが、頑張って演技していた。ちなみに、どうやって荷車などを調達したのかについては、めんど
くさいので、説明を省くことにする……。
「こんな時間に肥やし屋なんて珍しいな」
日没で、門番は松明を持っていた。幸い、さっきの門番とは別の門番だった。
「回収していない分があったということで来ました〜!」
シャルルがそう言うと、門番は荷車に近づき、一番近くにあった樽を、そっと開け、中をチラリと覗きこんだ……。
その樽の中は空っぽだった……。
「よし、入っていいぞ。入ったらすぐ裏へ回れよ」
「わかりました〜!」
門番が王城の門を開け、シャルルは荷車を引いて、王城の中に入った。
門をくぐった向こうには立派な庭園があり、シャルルは城壁沿いの道を、荷車を引いて歩いた。シャルルは王城へ入りこめたことに一安心した様子だったが、見回りの兵士が通り過ぎるたびに、顔を強張らせていた……。
そして、し尿を汲み取るためにある部屋に到着すると、シャルルは誰もいないことを確認した。それから、先ほど門番に開けられた樽以外の2つの樽をトントンと叩いた。
「うまくいったようだな」
「息苦しかった……」
ウィリアムとメアリーが、それぞれの樽の中から出てきた。門番に開けられた樽は、チェックされたときのための樽だったのだ。
「すごく緊張したよ」
シャルルはそう言って、深呼吸したが、自分がいる場所を思い出した様子で、オエッとしていた……。
「深呼吸するのはまだ早いぞ。今から国王を探さなくてはいけないのだからな」
ウィリアムがそう言って、シャルルの肩を叩く。
「どうやって、国王を探すんですか?」
メアリーが尋ねると、ウィリアムは少し考えた後、
「……そうだな。適当に歩き回っていれば、たどりつけるだろう」
と、無責任なことを言った……。どうやら、ここからのプランは無かったようだ……。シャルルとメアリーはやれやれと呆れていた……。