愛憎渦巻く世界にて
ウィリアムたちに引っ張られていった(または、引きずられていった)シャルルたちは、砂浜にある小型ボートのところに着いた。そのころには、蛮族の出現は散発的になっていた。
「急いでボートに乗ってください!!!」
偉そうな軍服を着た男が、日焼けしている腕を振って、シャルルたち(合流したので、ウィリアムたちも含む)をボートへ誘導する。
「言われなくても乗るよ」という感じで、シャルルたちはドカドカとボートに乗りこんだ。そして、シャルルたちが乗りこむとすぐに、砂浜にいた男たちが小型ボートを海へと押し出した。まだ浅い海面が、ボートの下から波立つ。それから、ボートにいた数人のこぎ手たちが、ボートを規則的に強くこぐ。シャルルたちを乗せたボートは、沖合いの大きな帆船に向けて、一直線に進んでいく。
ついさっきまでいたトラアン島から、どれくらいか離れると、シャルルたちは大きく息を吐いて、ただ安堵していた。シャルルとマリアンヌとクルップは、助けてくれた人々の正体をまだ知らなかったが、その3人にとって、今はどうでもいいことであった。
シャルルたちをボートへ誘導へと誘導した男は、シャルルたちを見送った後、砂浜に残っている自分の部下らしい全員に、ボートに乗るよう命令した。蛮族の出現は止んでおり、全員の乗船はスムーズに進んだ。
そして、最後に、その男が浅い海面からボートに乗りこんだ。ボートに乗りこんだ彼は、そこで立ち上がると、沖合いの帆船に向け、大きく手を振った。
その数秒後、大きな帆船から、砲弾が次々に発射された……。すさまじい連続した爆音がしてからすぐに、大量の砲弾がトラアン島にドカドカと着弾していく……。
これ以上銃弾の餌食になることを恐れ、ジャングルの中から様子を伺っていた蛮族は、砲弾の餌食になった……。ある蛮族の女は、頭部を砲弾にもぎ取られた……。また、ある蛮族の男は、上半身と下半身とが別れを告げることとなった……。倒れた木の下敷きになったり、弾け飛んだ岩の破片に頭蓋骨を割られた者もいた……。
マリアンヌが見たら失神するレベルの地獄絵図が、ジャングルの中で表現されていた……。
勇ましい砲撃の音をBGMに、シャルルたちは、その帆船ではためいている国旗を見上げる。新鮮さを感じさせるその国旗は、タカミ帝国の国旗であった……。