愛憎渦巻く世界にて
「伏せろ!!!」
ゲルマニアの叫び声が、シャルルたちの耳に届く。その声を聞いたシャルルたちは、脊髄反射的にその場に伏せる。
ターーーン!!!
ウィリアムの近くにいた軍服姿の男が、ホイールロック式の短筒を発泡した。その短筒は、メアリーが使っている短筒と同型のようだったが、綺麗な模様が刻まれていた。
「グワッ!!!」
銃声が聞こえた次の瞬間、伏せたシャルルたちの後ろから叫び声がした。
「うわぁ!!!」
シャルルが、後ろを振り返るよりも前に、彼のすぐ横に蛮族の男が倒れた……。その蛮族の男は、顔を4分の1ぐらい銃弾にえぐられて死んでおり、開きたての穴から眼球が飛び出している……。
その男が持っていた手斧は、シャルルの横にいるマリアンヌの頭のすぐ近くに落ちたが、彼女は何が起きたのかを理解できていなかったので、落ちたきた手斧に悲鳴をあげることはなかった。
「背を低くして、早くこっちに来い!!!」
再びゲルマニアの叫び声が聞こえたときになって、シャルルたちは背後に蛮族が迫っていることに気がついた。
「うひゃあ!!!」
マリアンヌはマヌケな大声をあげた……。しかし、それを笑っていられる余裕は、シャルルにも無く、彼は彼女の手を引きながら、砂浜を匍匐前進し始めた。クルップは、重い剣で砂浜に線を引きながら進んでいる。
「キテナフモリワンチャン!!!」
「テニヘモルワンチャン!!!」
蛮族の雄叫びがどんどん大きくなり、その雄叫びの主たちが次々にジャングルから抜け出てきた。そして、匍匐前進しているシャルルたちを発見すると、彼らに襲いかかる……。
ターーーン!!! ターーーン!!! ターーーン!!!
しかし、蛮族たちは、シャルルたちに襲いかかる前に、砂浜にいる人々から発せられる銃弾に襲われていく。ある蛮族の男は、左胸に銃弾の穴を開けて、運良くそのまま即死した……。また、ある蛮族の女は、腹に銃弾を喰らい、その場でのたうち回っていた……。
「振り向いちゃダメですよ!」
シャルルはマリアンヌにそう言い聞かせると、匍匐前進のスピードを早める。銃撃は止むことなく続く。
蛮族は、次々にジャングルから飛び出してきたが、10秒もたたないうちに熱い砂浜で寝転がることとなった……。ジャングル近くの砂浜は、白い砂浜と緑色のジャングルとの間を、蛮族の血による赤色で染まっていく……。緑と赤の不気味なコントラストである……。
「ほら、引っ張ってやろう」
ウィリアムたちが中腰で、匍匐前進をしているシャルルたちを迎えに来てくれた。ウィリアムたちの頭のすぐ上を、銃弾が通り過ぎていき、蛮族のほうへと向かう。
ウィリアムがシャルルを引っ張り、メアリーがマリアンヌを引っ張り、ゲルマニアがクルップを乱暴に引きずっていった……。まだ赤く染まっていない砂浜に、3人分の跡がついていく。