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愛憎渦巻く世界にて

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 ジャングルまで「道」がつながり、シャルルたちはうっそうとしたジャングルの中に飛びこんだ。そして、蛮族たちに回りこまれる前に、シャルルたちは全力で走った。シャルルはマリアンヌの手を引いて走り、彼女のほうも足手まといにならないように全力疾走していた。
 ジャングルの中は、真昼にも関らず、よどんだくもり空の下にいるかのように薄暗く、地面を走る木の根に、シャルルとマリアンヌは何度もつまづく。それに蒸し暑く、シャルルたちの体力を奪っていく。

 そんなシャルルたちを、蛮族が追いかける。蛮族はジャングルに慣れているので、じきに回りこむことができるだろう。さらに、地の利を活かした攻撃も可能なことから、蛮族の戦意は高まりつつあった。ただし、先ほどのように数で攻めるのは無理があるので、タイミングが重要であった。


「やっぱり、クルップという方を助けに戻るべきだと思います!」

 汗だくで走っていると、マリアンヌが突然そんなことを言い出し、その場で立ち止まった……。彼女の手を引いていたシャルルは転びかける。
「いったい何を言い出すんですか!? 彼はあきらめるしかないんですよ!」
シャルルは周囲を警戒しながら、マリアンヌを説得する。
「やれやれ、どうしたんだ?」
先行していたウィリアムたちが、シャルルとマリアンヌのところに戻ってきた。
「マリアンヌ様が、クルップを探しにいこうと言い出して……」
それを聞いたウィリアムたちは、やれやれという表情をしていた。しかし、マリアンヌは、態度を変えることなく、その場に立っている。
 シャルルは、口達者なウィリアムに、マリアンヌを早く納得させてほしかった。今にも繁みの中から、蛮族が飛び出てきそうだ。ゲルマニアとメアリーは、周囲を警戒する。
「マリアンヌさん。クルップのことはもうあきらめましょう。彼はれっきとした軍人なんですから。もしも彼がまだ生きていたとしても、今ごろ蛮族どもが腹いせに、彼をBBQにしていますよ」
ウィリアムは、少し不謹慎なセリフで、マリアンヌを説得したが、彼女は首を横に振る。そして、彼女は真剣な口調で、
「軍人さんだったとしても、同じ年頃の同じ人間です」
そう言い返す。ウィリアムも負けじと、
「彼は、あなたを殺そうとしている敵なんですよ」
と、言い返した。しかし、
「私とゲルマニア様の命をかけたこの戦争が無ければ、彼は私を殺そうとしないでしょう。私のために、彼を見殺しにすれば、私は彼を殺したと同じです。私は、自分のために、これ以上人が死ぬことは望んでいません」
マリアンヌが、強い意志がこもったしっかりとした口調でそう言ったので、ウィリアムは彼女の意志を尊重することにした。マリアンヌの言葉を聞いたシャルルたちも、納得するしかなかった。
「わかりましたよ。では、私がクルップを探してきますから、マリアンヌ様は先に」
「私1人で行きます」
ウィリアムの言葉を遮り、マリアンヌが言った……。その無謀なセリフを聞いたシャルルたちは、キチガイを見るような目つきで、マリアンヌを見るしかなかった……。
 しかし、その言葉にも強い意志がこもっており、ウィリアムは彼女の意見を尊重するしかなかった。ただし、いくらなんでも、彼女を1人で行かせるわけにはいかないので、
「せめて、シャルルといっしょに行ってください。私たちは敵を引きつけます」
彼女が納得できるような折衷案を示した。たくさんの敵を引きつける必要があるので、まだ戦い慣れていないシャルルを、マリアンヌといっしょに行かせたほうが、都合がいいのだ。
 シャルルは、ウィリアムの突然の提案に「え?」という驚きの表情をしていた。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん