愛憎渦巻く世界にて
第19章 テキミカタ
シャルルたちは、地面に激突して壊れた小屋ややぐらのガレキの中にいた。バラバラになった丸太や小屋にあったツボの破片などが、小山を築いていた。
そして、そのガレキの小山の周囲には、殺気だっている蛮族がいた……。笑ってすませてくれないことぐらい、誰にでもわかることであった。
「マリアンヌ様、大丈夫ですか!?」
「シャルル様のおかげで、私は大丈夫です」
「やれやれ、最高の島だなここは!」
「まさか、こんなめんどうなことになるとは思わなかった」
シャルルとマリアンヌとウィリアムとメアリーとゲルマニアが、ガレキの中から出てきた。しかし、クルップは出てこず、どこにいるのかもわからなかった……。
「クルップとかいう奴を探さないと!」
シャルルは、まだガレキの中にいるはずであるクルップを探し始めたが、
「奴も軍人だ。いざというときの覚悟はできているはずだ」
ゲルマニアが止めに入った。
「だけど、放っておくには」
「……いいんだ。それより、ここから早く逃げなければ!」
ゲルマニアはそう言ったものの、悔しさが少しだけ言葉から漏れていた。しかし、これ以上議論をする余裕は無かった。なぜなら、
「キメキネリワンチャン!!!」
蛮族たちが気勢を上げ、1人の蛮族の勇敢そうな男が、シャルルたちに手斧で襲いかかってきたからだ。その男は、石製の鋭い手斧を上下に振りながら、少し離れたところにいたシャルルに向かっていく。
「ヤバイ!!!」
シャルルはとっさに、ガレキの上に落ちていた長い物を手にすると、自分に向かってくる男に向かって、ソレを乱暴に振り回した。手斧の刃が、シャルルに迫る。
ガキンッ!!!
幸運なことに、振り回していたソレが、手斧の柄に当たり、男は手斧を地面に落とした。男はすぐに手斧を拾おうとしたが、
「テェイ!!!」
ゲルマニアの剣が、その男の首を一瞬で斬った。胴体から離脱した頭部は、勢いよく宙を舞い、シャルルたちを取り囲んでいる蛮族の群集の中に落ちていった。突然の頭部の到着に、群集の中から悲鳴が上がる。
シャルルは、頭部を無くした男が目の前に倒れると、ソレを振り回すのをやめた。シャルルは、自分が振り回していたソレを見て、驚いていた。
シャルルが振り回していたソレは、剣だったのである。それも、まだガレキの中にいるはずのクルップのロングソードだ。
「それを使え」
血が滴り落ちる剣を持っているゲルマニアが、躊躇することなくそう言う。シャルルは一瞬戸惑ったものの、重いロングソードを構え直して、かばうようにマリアンヌの前に立った。
ウィリアムは弓矢を構え、メアリーは短筒を構え、ゲルマニアは剣を構えた。そして、自分たちを取り囲んでいる蛮族に、殺意を届ける。
蛮族は、先ほどの男のようにはなりたくないと、シャルルたちに近づかずに、その場に踏みとどまっていた。しかし、シャルルたちは、その場にいつまでも踏みとどまっているわけにはいかない。