愛憎渦巻く世界にて
もちろん、押し倒されるのを黙って待っているシャルルたちではない。ウィリアムとメアリーは、矢や銃弾を放つスピードを上げ、シャルルとマリアンヌとゲルマニアとクルップは、小屋中の物を下にいる蛮族に投げつけていった。やぐらの足場である4本の丸太は、地中にしっかりと埋めてあったようなので、蛮族があきらめるまでは持ちこたえられるかもしれない。
……だが、大勢いる蛮族に対して、それらの抵抗は、焼け石に水であった……。ひるんだり、逃げ出すこともなく、蛮族はやぐらを押し続ける。
そして、とうとう、やぐらの足場の丸太は、バキバキバキバキという音とともに、4本とも折れてしまった……。それからすぐに、やぐらは勢いよく傾いていく。
「キャーーー!!!」
マリアンヌの悲鳴が、傾く小屋中に響き渡る。シャルルは、片手で柱に掴まり、もう片方の手でしっかりとマリアンヌの手を握りしめた。そのおかげで彼女は、今まで座っていた藁のように滑り落ちていかずにすんだ。
「うわ!!!」
そんな2人のすぐ横を、手を滑らせたクルップが転がっていった。ゲルマニアが手を伸ばしたが、届かなかった。
転がり落ちていったクルップは、下にある壁にぶつかったせいで気絶してしまった……。運が悪いことに、小屋に残っていた物が滑り落ちていき、気絶したクルップを覆い被せてしまった……。これでは、すぐに引っ張りあげることは無理だ。さらに、傾きは直角になろうとしていた……。
室内の傾きが直角になった瞬間、小屋を激しい衝撃と振動が襲う……。やぐらが、完全に地面に倒れたのだ……。地面から伝わる衝撃と振動に耐えきれなかった小屋は、ガラガラガラガラガラガラと崩れていった……。
シャルルたちはその中におり、崩れた小屋の周囲を蛮族が一斉に取り囲む……。