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愛憎渦巻く世界にて

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「もううんざりなのよ!!! 朝になったら叩き起こされ、量だけは見事な朝食を食べさせられ、何の役に立つのかもわからないことを勉強させられ、昼食と夕食は「愛国的メニュー」ときた!!! 遊ぶにしても羽を伸ばすことはできやしない!!! なぜなら、とても「私思い」の人たちが、よく開く口で割り込んでくるから!!!」

ブリタニアは、一気にまくしたてた……。少なくとも気品は無い乱暴な言葉づかいだったので、執事は嘆かわしそうに顔をおさえた。専属メイドなど、ブリタニアをキチガイだという目で見ていた。この分だと、彼女の両親である皇帝と皇妃など、泡を吹いて失神していることだろう……。
 しかし、皇帝と皇妃は平然としていた……。そして、
「よし、それならウィリアムが帰ってきたら、おまえも旅に出ていい」
少しも躊躇することなく、皇帝はブリタニアにそう言い放った。皇妃はただ微笑み、同じ意見であることを表情でブリタニアに伝えた。
「「え?」」
同時に口走ったのは、ブリタニアと執事だ。2人とも、どう反応すればいいのかを考えた。しかし、そんな2人に対し、皇帝は構うことなく話を続ける。
「外を見てくるというのもいい勉強になるだろう。言っておくが、これは役に立つ勉強だぞ?」
「わかった!!!」
皇帝が言い終わった次の瞬間、ブリタニアは快く了承した。若い彼女のほうが老いた執事よりも反応が早かったので、執事は口を挟みそこなった。彼は「しまった」と思うしかなく、
「……仕方がありませんな」
渋々の口調で追認した。
 ブリタニアは、思わず立ち上がって喜んだ。そして、執事がその喜び方を注意する前に、彼女はイスに座った。それでも、執事はブリタニアに一言いわずにはいられない様子だった。だが、

「皇帝陛下!!! 一大事でございます!!!」

突然ダイニングルームに飛びこんできた軍服の男に、大声で口を挟まれることとなった。執事は嫌そうな顔でその男を見ていたが、第3者に口を挟まれるということが、どれほど不愉快であるかを理解できたかはわからない。ただ、
「突然何事か!?」
執事は、文句を垂れることをやめるつもりは無いようだ。おそらく、死ぬ寸前まで目の前にいる人物に文句を垂れることだろう。
「どうした?」
皇帝が、男に落ちついた口調で問う。どうせ対したこと無い一大事だろうというような態度だった……。皇帝のこの能天気なレベルの冷静さを、彼の息子であるウィリアムが受け継いでいるということは間違いない。
 ただ、つまらない日常にうんざりしているブリタニアは、どんな出来事が起きたのかを早く知りたそうな様子だった……。
「我が国からトラアン島にかけての海域で、我が国の国旗をつけた船がゴーリ王国の船に撃沈されたとのことです!」
皇帝へ報告をしたこの男は、タカミ帝国の軍隊の将軍であった。彼が着ている、ゴーリ王国やムチュー王国よりも近代的な軍服には、威厳を感じさせる勲章がいくつもぶらさがっていた。おそらく、タカミ帝国軍のナンバー2(ナンバー1は皇帝)だろう。
 それはさておき、このタカミ帝国の船とは、シャルルたちの船のことであった。
「しかし、我が国の船だという証拠はあるのか?」
当然の質問だ。偽の国旗を船に掲げることなど簡単なことである。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん