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愛憎渦巻く世界にて

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 昼食の時間になり、勉強を終えた(実質あまりしていないが。)ブリタニアは、広く豪華なダイニングルームで、皇帝(父親)と皇妃(母親)とともに昼食を取る。朝食と昼食と夕食の3食を、家族いっしょに同じテーブルで食べることは、タカミ皇室での規則(もちろん、ウィリアムは旅に出ているので、いっしょに食べることはできない。)の1つであった。
 ブリタニアは、いっしょに食べるこの規則に不満があるわけではなかったが、なぜか不機嫌そうな表情をしていた……。その理由は、テーブルの上にある昼食だ。

 今回の昼食のメニューは、ローストビーフとサンドイッチとフィッシュアンドチップスなどで、いつものようにパッとしないメニューだった……。後から運ばれてくるデザートも同様であることもわかっていた……。
 そのため、彼女は、自国のタカミ料理は好きではなく、ムチュー料理やゴーリ料理のほうが好きなのであった……。しかし、タカミ皇室付きのシェフは、よほど自国の料理が好きらしく、時々しか、ムチュー料理やゴーリ料理を作ってくれない。このことも、彼女が自由になりたがる理由の1つであった。

 ブリタニアは嫌々、目の前にあるタカミ料理の昼飯を食べ始めた。皇帝は、すぐそれに気づいたらしく、
「ブリタニア、美味しそうに食べなさい。私までまずく感じる」
と注意した。それを聞いたブリタニアは、もぐもぐと食べている皇帝のほうを向き、
「まずいものはまずいですわ!」
はっきりとそう言った……。シェフがこの場にいないことが幸いだった。ただ、ダイニングルームにいた執事とブリタニア専属のメイドは、おどおどした様子を見せている。
 母親である皇妃は、彼女をキッと睨んだが、彼女はスルーした。父親である皇帝は、咳払いした後、
「私が言うのはまずいが、たしかにタカミ料理は、あまり美味しい料理ではないな」
言いづらそうに言った。すると彼女は、「それなら、シェフにタカミ料理を作るなと命令してくださいな」と言おうとしたが、
「私たちは、愛国者の手本とならなければならないのだよ。それなのに、自国の料理ではなく他国の料理ばかり食べるわけにはいかない。必要悪なものは全て排除するという考えのおおらかではない人間は、人々の上に長く立っていられないぞ?」
タカミ帝国を支配している皇帝が説得力ある言葉を続けて言ったので、これ以上言うのをあきらめた。そこで彼女は話題を変えることにした。
「お話は変わりますけど、私もお兄様のように、旅に出たいですわ!」
旅に出て自由の身になりたいブリタニアは、いきなり自分の願望を皇帝と皇妃に伝えた……。
 それを聞いた皇妃はただ驚くしかなかったが、皇帝は予想していたらしく、驚いていなかった。それだけでなく、ブリタニアの旅立ちに賛成といった様子で、「いいともいいとも! 世界を見ておいで! お土産を忘れるんじゃないぞ!」とか言って、ブリタニアの旅立ちを許しそうだ。しかし、
「なりませんぞ!!!」
皇帝がOKを出しそうだということを察知した執事が止めに入った……。彼女の専属メイドも首を激しく横に振っている。この場にいる賛同者は、皇帝だけだろう。
「じいやは口を出さないで!!!」
ブリタニアは、執事に睨みつけながら怒鳴った。しかし、執事はたじろくことなく、
「国外は危険でいっぱいなのですぞ!!! もしゴーリ王国やムチュー王国で悪党に襲われでもしたら、どうなさるおつもりですか?」
そう言った。だが、彼女の睨みはさらに鋭くなり、さらに強く怒鳴る……。
「私はもう子供じゃないわ!!!」
子供扱いするなというお決まりのセリフが、ブリタニアの口から飛びだす。
「ウィリアム様のことだけでも大変ですのに、ブリタニア様まで旅に出られたりすれば、タカミ帝国の行く末が不安定極まりなくなります。もし子供でないのでしたら、それぐらいはおわかりでしょう?」
執事は、最後のセリフを皮肉っぽく言った。しかしそれが、彼女の怒りをマックスにさせた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん