小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

愛憎渦巻く世界にて

INDEX|102ページ/284ページ|

次のページ前のページ
 


「まあまあ、ややこしい領土問題は脇に置いておいて、この島に住んでいる連中についての話をしよう」
幸い、ウィリアムが、ややこしい話になることを防いでくれた。
「この島は無人島ではないのか?」
「いや、野蛮人が住んでいるという話だ」
「ど…どういう連中なんだ?」
シャルルが周囲を見回してから言った。太陽は既に沈んでおり、シャルルの周囲は夜闇に満ちている。月や星による微かな光だけしか、たき火の周囲を照らしておらず、何かが接近してきても、素人には察知できないだろう。
「まず、文字の読み書きができない」
「……ぼく、文字の読み書きがほとんどできないんだが?」
シャルルが恥ずかしそうに言った……。
「そういう問題じゃないから、シャルルは関係無い。それから、話し合いというものができない」
「話し合いが通じない連中なら、どこの国にも腐るほどいるぞ?」
ゲルマニアは、自分の父や兄のことを思い出していた。
「だから、そういう問題じゃない! 根本的な違いと言えば、肌の色が違うことだな」
「肌の色が違う? やまさんの民族みたいにイエローなのか?」
「いや、黒い肌をしている」
「まあ、おぞましい!!!」
マリアンヌは怖がり始め、シャルルが彼女を安心させ始めた……。
「夜は交替で起きていることとしよう」
ゲルマニアはそう言うと、野蛮人が襲撃してきた場合に備えて、剣を鞘から抜いた。
 どうやら、クルップや騎士と違い、ゲルマニアとウィリアムとメアリーは、武器を捨てなかったらしい。ただ、メアリーの短筒や弾薬はまだ乾いておらず、予備の武器であるナイフを使うしかなかった。
 クルップと騎士は、シャルルたちの話をところどころ聞いており、縛られたままであることに不安を感じていた。そこで、クルップは、自分たちも役に立つから、この縄をほどいて武器をくれと言いだした……。シャルルたちがOKを出さなかったのは、言うまでもなかった……。


 ……深夜、シャルルがたき火のそばで見張りをやっていた。彼のすぐ近くにはマリアンヌが寝ており、たき火を取り囲む形で、ウィリアムたちも寝ていた。クルップと騎士は、ヤシの木に縛られたまま寝ていた。
 やることといえば、ときどき周囲を見回したり、たき火に薪を追加することぐらいで、猛烈に暇であった。現代ならば、スマホといった暇つぶしツールがあるわけだが、シャルルたちの時代には電話自体無いので、ただただ時間を過ぎるのを待つしかない。
 この退屈からの眠気が、シャルルに襲いかかり、彼はコクリコクリとし始めてしまった……。しかし、睡魔に負けて寝てしまえば、どこかに潜んでいるかもしれない野蛮人に襲いかかられることになる……。
 シャルルは、使命感と恐怖感から、眠らないように努力した。

「ぐぅー。ぐぅー」

 しかし、シャルルは睡魔に負けた……。シャルルの頭は下に向いており、小さなイビキが、たき火のパチパチという音や波音とともに鳴っていた。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん