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あみのドミノ

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亜美乃は前を向いたままで言った。どこへ行き着こうとしているのか解らないまま歩いていた感じから、未来が見えたような歩き方に変わってきた。そして今までと反対に私を引っぱるように亜美乃は歩き始めた。

デパートの入り口から冷気が流れているものの、人混みのせいと駅そのものは冷房していないので、外よりも暑く感じた。何か考えなくてはならないものがあった気がしたが頭がぼうっとして思い出せない。

亜美乃は駅の券売機に向かいながら、「早く奥様の所へ帰ってあげて」と言った。そのにっこりと微笑んだ顔は無理に作ったのか自然に出たものか解らなかったが美しい。私はまだ何か釈然としないまま切符を買った。

改札を通って、亜美乃は立ち止まり、そして小さく手を振ってすぐにホームに向かった。私はしばらくその後ろ姿を見送っていたが、じゃまだという感じで人混みに押され、すぐに見失ってしまった。
 
作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川