あみのドミノ
「両方が繋がるの」
私は別れとダンスから『ラストダンスは私に』という歌を思い出したが、はてあれは別れの歌だったかなと思った。
「クイズ?」
私は亜美乃の横顔を見ながら聞いた。
「夏が終わるまでに、宿題!」
亜美乃は無理に踏ん切りをつけようとするかのように少し怒ったような声で言った。
「誰の?」
「私の、いや両方かな、まあいいや」
亜美乃は、その話題を棚上げにして、話しを始めた。
「昔ね、ワルツって気取った感じで無機質な音楽かと思っていたんだけどね。最近、違うなあって思えて来たの」
「ふーん」
私は亜美乃が何を言い出したのかと思いながら先をうながす。
「悲しいのね。ワルツって、人生って感じがする。美しくて悲しいの」
亜美乃はちょっと下を向いて今にも泣き出しそうにも見えた。しかし、亜美乃は絶対泣かないだろうという気もした。小さい時からずーっと泣くまいとしてきたような気がする。
亜美乃の特徴はブレーキだと私は思い、亜美乃を胸に抱き思うままに泣かせてやりたいと思った。私は亜美乃の肩を抱き寄せた。一瞬の抵抗のようなものがあって、すぐに亜美乃は私とよりそうように歩いた。しかし亜美乃は急に無口になっている。
「暑いなあ、どっかへ入ろうか」と私は沈黙に堪えられないで言った。
「うん、でも何だか向き合っていたくない気がする」
亜美乃の言葉に私は、もう話をしたくないということか、このまま寄り添って歩きたいのだろうかと考えてしまった。今まで率直に自分がしたいことを言っていた亜美乃、かなり解ってきたと思っていた亜美乃のほんの少ししか解らないのではないかという気もしてきた。
「このまま駅に向かいましょう」