あみのドミノ
12、信じているからねと言う妻
分別ある大人としての私は、妻と亜美乃の将来とを考えなくてはならない。そして亜美乃が望むなら父親のように振る舞わなくてはならない。疑似とはいえ両方で拡大解釈してきて、もう父娘ではない。しかし、男の本能としては魅力的な若い女性が自分を好いてくれているならすべてを投げ出してもいいと言っている。
毎日亜美乃のことを思っている。どこかで私もブレーキをかけながら。ただ待つ男になって。
多分亜美乃も色々と考えているのだろう。そして物足りないといいながらも若い男がいるのだ。
亜美乃から電話があったのは梅雨が明けて暑い毎日が続いている頃だった。
「お父さん、このまえのTシャツとジーパンどうなった?」
「ああ、大事にとってあるよ。女の人からプレゼントされたのって初めてだから」
「また、調子のいいこと言って、いっぱいいるんでしょ」
「この顔だからね」
「ああ、顔を除けば、結構いけるかもね」亜美乃が笑いながら言った。
「そんなにひどいか」私も笑いながら答える。
「会社には着ていかないんだ」
「まあ、得意先へはね、ああ土曜日なら会社にずっといるからいいけど」
「そう、明日だね。見たいわ」
翌日、ジーパンとTシャツで朝食をとっている私に、幸子が「あら、今日は休みでしたっけ」とびっくりしたように言った。
「ああ、今日は得意先へは行かないから」
私は新聞をみながら答えた。