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あみのドミノ

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亜美乃はもう、決まったという顔をしている。予想外の展開になって、私はまだ決断がつかない。亜美乃が私を引っぱるように公衆電話の所に行く。私は腹をくくった。もう亜美乃にまかせるしかない。すでに亜美乃のためなら人生が波瀾に満ちてもいいという思いもあるのだから。そう思いながら幸子の顔が浮かんだ。強い女なのか弱い女なのかわからない、表情の安定したおっとりした顔を。

「ああ、俺だけど、仕事が予定より早く終わったからこれから帰るよ。うん、あ、それから社員が料理を教えて欲しいっていうから、連れてゆくからね。スキヤキがいいって。そう、え、スキヤキなんて料理のうちに入らない?」

私は亜美乃を見ながら言った。亜美乃は笑って首をすくめる。その笑顔を見るだけでも電話して良かったと思った。
「まあ、そんな訳だから」私は電話を切った。
「私、料理はできるんだけど」と亜美乃は不満そうに言う。
「あ、そうか、でも一緒に行く口実としてはぴったりだろう」私は得意そうに言う。
「あ、気をつけなくちゃ。嘘の上手い男は」
亜美乃はさも可笑しそうに笑った。私もつられて笑う。

デパートの地下で肉を買う。二人で買い物をするというのもいいもんだと私は思った。
「あ、ちょっとあそこに寄って」
 亜美乃はお菓子の売り場に向かった。
「奥様、ケーキ好き?」
「うん、かなり」
「じゃあ、私からおみやげ」
 亜美乃がケーキを注文する。6個も買っている。「そんなにいらないんじゃない」私は小さな声で言った。
「大丈夫。私も食べるんだから」 
何が大丈夫なのか解らなかったが、私は亜美乃の嬉しそうな顔を見て心が温かくなる。

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川