あみのドミノ
最後はあっさりと娘は電話を切った。私は帰り自宅を始めた。外に出ようとした時に電話が鳴って、一瞬迷ったが、私は外に出て鍵を閉めた。しばらく電話は呼び続けていたが、ぷつんと切れた。私はそれを確認して会社を出た。踏ん切りがつかない太陽がまだ西の空で曇天を照らしていた。私は記憶をたどりながら家路につく、新宿で亜美乃と歩いている時に、誰かが「アッ」と言ったのを記憶している。娘だったのかと、少し運命のようなものを感じた。
二人の娘によるブレーキによって、どんどん倒れて行くドミノが止まった。しかし、ちょっと身を倒すとはるかかなたまで心躍らせるドミノは並んでいて、また倒れ始めるだろう。妻とは依然仲よく暮らしていたし、亜美乃とは最後まで行ってないと自分に言い訳をしながら。亜美乃にしばらく会っていないと、思いとはうらはらに、思い出す顔がだんだんはっきりしなくなるような気がした。それは私の神様が会って確認せよとでも言っているように感じられた。そして、あの心が躍っている感覚をどうしてもまた体験したくなる。やはり、恋だろうか。